費用や手話通訳者のスケジュールといった事情もあるので、すべての街頭演説に手話通訳者が手配されているわけではないが、手話通訳者を帯同させるという概念は、他党にも影響を与えた。いまや自民党をはじめとする他党も大規模な街頭演説には手話通訳者を帯同させるようになった。
れいわ新選組は自民や立憲のような大政党ではないために、費用や手配といった面で手話通訳者を立ち合わせることが難しいらしく、街頭演説会ではAIによる文字起こし機能を活用。設置されたモニターに演説内容を表示させている。
マイノリティは、障害者だけではない。社会には、さまざまなマイノリティがいる。例えば、今夏の参院選では、性的少数であるLGBTQを公言する立候補者も目立つ。
一例をあげれば、れいわ新選組からは前新宿区議の依田花蓮(よだかれん)さん、社会民主党からは村田しゅんいちさんが性的マイノリティの候補者として全国比例から出馬した。
マイノリティはLGBTQだけではない。自民党は、ウイグルにルーツを持つえりアルフィヤさんを擁立。日本に馴染みの薄いウイグルという国にルーツを持っている女性を擁立したことは、自民党が多文化共生への取り組みを政治的急務だと認識している証だろう。
候補者のラインナップを見る限りでは、各党はマイノリティに配慮するようになった。
参院選を控えて、立憲は立候補者の女性比率を50%以上にしたと発表。女性候補者の比率を高めることは、以前から泉健太代表が公言していた目標でもある。早期実現したことは、立憲が多様性への対応に本気で取り組んでいることを感じさせる。
しかし、多様性という視点から今夏の参院選を眺めると、これまで先頭を走っていたはずの立憲が周回遅れ気味になっている。つまり、どの政党も積極的に多様性を意識するようになっているのだ。
参院選では、ウクライナ侵攻に端を発したエネルギー問題や憲法改正、円安による物価高、少子化対策などが争点となるだろう。そうした政策議論を疎かにはできない。
参院選の焦点は、そうした重要なトピックスだけにとどまらない。マイノリティへの取り組みも打ち出されることになるだろう。
これまでマイノリティは見向きされることが少なく、ゆえにマイノリティに対しての政策は後回しにされがちだった。なぜなら、選挙は多くの票を得た候補者が当選するからだ。多数派に向けた政策を打ち出せば、多くの票を見込める。多数派におもねった政策は、本来なら当選への近道でもあった。
しかし、私たちの社会は多くの人たちで構成されている。どんな人でも、必ず多数派の側にいるわけではない。少数派に向けた政策を打ち出すことができる政治家も必要なのだ。
今回の参院選は、多種多様なバックグラウンドを持つ人が多く立候補した。多様性は選挙を動かす力になるか?