心筋梗塞のリスクも
『タクシードライバーぐるぐる日記』(三五館シンシャ)の著者である内田正治さん(70)は、2016年9月、都内でのタクシー乗務中に突然目の異変を感じた。左目にカーテンが掛かったように、真っ暗になったというのだ。黒内障だった。内田氏はこう振り返る。
「タクシードライバーは夜中も働かなければならないため、不規則極まりない生活をしていました。もともと糖尿病と高血圧の持病があり、薬を飲んで治療していたのですが、それも黒内障の発症に関係していたのかもしれません」
幸い、検査では血栓が見つからなかったが、医者からは「糖尿病の持病があるため、脳梗塞を起こす可能性がある」と指摘され、血液をサラサラにする抗血小板剤の「エフィエント錠」を6年間服用し続けているという。
「それ以来、黒内障は起きていないのですが、一昨年に心筋梗塞になりました。年齢も年齢なので全体的に血管が弱っていたんだろうなと思います」(内田氏)
動脈硬化が進んで黒内障や脳梗塞へとつながっていく問題を解消するうえでは、まずは生活習慣の改善が基本となる。
「高血圧、脂質異常症、糖尿病、肥満、喫煙、飲酒、不規則な睡眠など生活習慣病やそのリスクを抱えている人は要注意です。黒内障は体からのSOSだと思ってください。黒内障が起こるということは、そもそも全身の血管で動脈硬化を起こしている可能性があり、心筋梗塞のリスクも高い。黒内障の発症を防ぐには、睡眠や栄養、運動に気をつけて規則正しい生活を心がけることが第一。また、これからの季節は脱水にも注意しましょう。マスク生活で水分補給を忘れたり、流行りのサウナに長時間入ることで脱水症状が起こり、血流が滞る危険性があります」(伊賀瀬医師)
予防には、定期的な目の検査も有効となる。「眼底検査で血管の状態をチェックできる」と、伊賀瀬医師が続ける。
「眼底検査をすることで血管の状態が分かります。動脈は切れたりしないように基本的には体の奥を走っているので特別な器具を使って検査をしますが、目の網膜にある動脈は人体で唯一、直接の確認が可能です。目は“血管が健康かのバロメーター”になるわけです」
平松医師も定期的な目の検査を勧める。
「“目の寿命は70代まで”と言われますが、きちんと検査すれば重大な疾患でも早期発見でき、治療が可能です。60歳を過ぎたら定期的なメンテナンスが望ましいです」
大病のサインは目に現われる。違和感を覚えたら、「ちょっと疲れたのかな」などと自己判断せず、医師に相談するのがよさそうだ。
※週刊ポスト2022年7月1日号