2019年には海外で生活をする日本人は140万人を超え、そのうち海外永住者は50万人以上。2020年にはコロナ禍に伴う入国制限で長期滞在者は減少したものの、永住者に関しては増え続けているという。今や海外移住は身近なライフスタイルの一つとなっているが、実際にどんなメリット、あるいはデメリットがあるのだろうか。昨年、コロナ禍で海を渡ったアラフォー女性・ NATACOさんが、海外でのリアルな生活、そこで気付かされた「日本人の時間の考え方」について語った。【連載全5回中第1回】。
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はじめまして。突然ですが、私はパンデミック渦中だった2021年6月、日本からトルコのイズミルという町に移住しました。東京生まれで日本人の父とウクライナ人の母を持つ私は、食べることが大好きで、それが高じて料理家からフードプランナーとなり、現在は食材プロデューサーとして活動をしています。
そんな私があることをきっかけにトルコに生活の拠点を置くことにしたのですが、今ヨーロッパに住むと聞いてどんなことを想像するでしょうか? 新型コロナの恐怖、あるいはロシアのウクライナ侵攻によるヨーロッパ全体の危機を想像し「無謀」や「真似できない」と感じる人もいるかもしれません。トルコに住み始め1年が経ちましたが、私に関して言えば「日本を離れて良かった」「トルコに来て良かった」と断言できます。むしろ、なぜもっと早く移住しなかったのかと後悔しているぐらいです。
トルコに移住した理由は改めて説明しますが、今回はこの国が気づかせてくれた日本にはない「時間の考え方」についてお話をします。
私が住むトルコ西部にあるエーゲ海に面した都市イズミルは人口が約400万人。イスタンブール、アンカラに続くトルコ第3の都市と言われていますが、非常に牧歌的な場所です。のどかな港町ゆえ、時間の感覚は根っこから東京と違います。
東京で平日の毎朝の挨拶で、「おはようございます」の次に「お元気ですか?」と会話を続けることがどれだけあるでしょうか? 私が東京にいた頃は、よっぽどの時間がない限り、朝の挨拶のあとに世間話をした記憶がありません。しかし、トルコでは挨拶からの「元気ですか?」が当たり前なんです。そこから、さらに時間をかけてコミュニケーションを取ります。今朝しゃべった相手と一時間後に電話をしたとして、その都度に「元気?」としつこいくらいに元気かどうかを確かめられます。
人と人の関わり方がドライな東京とは全く違います。「時間に追われる」という感覚がないのです。会う一人一人に対して自分の心にゆとり、時間に余裕がないと「元気ですか?」と話しかけるコミュニケーションは、なかなかできない気がします。
しかし、この時間との向きあい方には、移住当初は戸惑いました。トルコでできた友人と約束を取り付けようとしても、だいたいが明日、または明後日まで。一週間先の予定を決めたいと私が言っても、「近くなったら決めよう」と言われます。