日本では多くの人が胃腸薬を日常的に服用しているが、なぜ頻繁に処方されるのか。内科医の谷本哲也医師(ナビタスクリニック川崎)が解説する。
「ストレスなどで胃腸の不調を訴える患者さんが非常に多いことに加えて、最近は食生活の欧米化で肉類を多食するようになり、その消化のために胃酸が多く出ることで、逆流性食道炎になりやすくなったと言われます。
またピロリ菌がいると胃が荒れやすいのですが、ピロリ菌を除去しても今度は胃が元気になって胃酸が出やすくなる傾向があります。逆流性食道炎は、日本人の10人に2人が罹患するほどよくみられる病気になりました」
しかし、胃腸薬の長期にわたる処方は医師の「漫然処方」というケースも少なくないようだ。
「解熱鎮痛剤として使われる非ステロイド性抗炎症薬、またはステロイドや抗がん剤といった胃腸障害を起こす可能性のある薬と一緒に、“副作用を未然に防ぐため”としてプロトンポンプ阻害薬(PPI)などの胃腸薬の処方をリスクに応じて考慮することが慣例化しています」(谷本医師)
PPIは世界でもメジャーな胃腸薬として知られ、日本でも非常に馴染み深い薬だ。医療・医薬品の情報調査を手掛けるエンサイスの集計によると、昨年度の医薬品年間売り上げランキング(薬価基準ベース)では、3位にタケキャブ、7位にネキシウムと、PPIが2つランクインしている。
慢性痛などに悩む高齢者が、痛み止めとして非ステロイド性抗炎症薬を常用し、同時にPPIなどの胃腸薬を長期間飲み続けるケースは多い。その前提には、「効き目が高いのに副作用が少な目」というPPIの利点があると谷本医師は続ける。
「PPIは胃酸を抑える薬で、短期的には副作用のリスクが比較的少ないので気軽に処方することができ、患者さんも安心して飲むことができます」
ただ、胃腸薬として単独で飲む分には問題がなくても、「飲み合わせ」によっては新たな不調を招くこともある。