腎障害リスクが3倍超に
谷本医師が説明する。
「最近の研究で、解熱鎮痛薬の非ステロイド性抗炎症薬とPPIを併用すると、腎臓を悪くする人が増えるとの結果が発表されました。非ステロイド性抗炎症薬の副作用として知られる腎障害が、PPIの併用により起こりやすくなるということかもしれないので、注意が必要です」
京都大学医学部附属病院薬剤部らの研究チームが、2005年1月から2017年6月までにPPI、非ステロイド性抗炎症薬、抗菌薬の処方を1回以上受けた患者を健康保険のデータベースから抽出し、過去に腎臓病にかかった記録のない患者約22万人(平均年齢45歳、女性は44%)を平均2.4年追跡して分析した研究結果がある(医学誌『BMJ Open』2021年2月15日付に掲載)。
追跡調査中に急性腎障害と診断された317人を詳しく分析したところ、PPIと非ステロイド性抗炎症薬を併用していた患者の急性腎障害発症リスクは、併用なしに比べて3.12倍も上昇していたという。
この研究の調査対象は処方薬に限られるが、非ステロイド性抗炎症薬は薬局で市販薬を購入できるため、PPIを服用中の患者は特に注意が必要だ。
谷本医師は、「そもそも胃腸薬はダラダラと長期間にわたり飲み続けるものではない」と言う。
「PPIは比較的安全な薬とはいえ、長期服用による副作用が起こることはあり得ます。胃酸を抑える薬は栄養吸収も抑えますし、胃酸を抑えすぎて体がバイ菌に弱くなり、胃腸炎にもなりやすくなる。私は『胃腸薬は症状が落ち着いたらやめてみましょう』と患者さんに伝えています。“お守り代わり”の長期服用は要注意です」
※週刊ポスト2022年7月22日号