7月5日、TBSドラマイズム枠で始まった『ロマンス暴風域』(MBS火曜深夜0時59分TBS火曜深夜1時28分)。原作は鳥飼茜の同名漫画作品。
主人公はモテない地味なアラサーの民生(渡辺大知)。仕事は非正規、自己肯定感は低く、結婚できないと諦め、高校の美術講師の仕事も契約終了が迫っている。出会った風俗嬢・せりか(工藤遥)と疑似恋人同士の関係になった民生。しかし、容赦のない現実を突きつけられていく……。
主人公・民生を演じる渡辺さんは、個性的な役をやらせてもピカ一ですが、今回はごく平凡でコンプレックスを抱え風采の上がらない、どこにでもいそうな男になりきっています。大都会の中で居場所のない孤独を体現しているようです。一方、風俗嬢・せりかを演じる工藤遥さんは、純な側面と現実を突き放した風俗のプロと、両面をクルクルと演じ分けていき、心の中は乾いた砂漠にも似て哀しみを感じさせます。
少し前なら落ちこぼれでも何でもなかった人生が、今では落ちこぼされていく社会の形を見せられて、視聴者の中にいろいろな感情が去来する。「標準」という枠から自動的に排除された二人に、生きていく幸せって何なのか、ふと考えさせられる。こちらも文学的なドラマです。
奇しくも、二作品には共通点があります。大都会の中でどこにでもいそうな登場人物たち。その心根を丁寧に鋭く描き出すところから物語が始まること。そして、登場人物たちがヒリヒリとした孤独感を纏っていること。人と人との関係を描く物語であること。ドラマは社会を映す鏡。「幸せな一般市民」像からどこか外れた人たちの有様に、今の日本を見る。秀作の匂い漂う2つの深夜ドラマから目が離せません。