ももやぶどうが旬を迎え、スーパーマーケットには各地から届いた果物が並ぶ。
「フルーツ好きの私にとっていまは最高の季節なのですが、ある年の出来事がトラウマになってしまいました」
そう話すのは、大阪府に住む主婦の西田真由美さん(55才・仮名)。
「食後の薬をのんだ後、大好きなグレープフルーツを食べ終わって台所に立とうとすると目の前が急に真っ暗に。めまいに襲われた瞬間に倒れてしまった。自宅だったので家族に介抱されて大事には至りませんでしたが、急なことでものすごく怖かった。医師によれば、高血圧の降圧剤をのんでいるのにグレープフルーツを食べたからのようです」
西田さんの身に何が起きたのか。銀座薬局代表で薬剤師の長澤育弘さんが解説する。
「グレープフルーツに含まれる苦み成分の『フラノクマリン類』が、小腸の上皮細胞に存在するCYP3A4という薬物の代謝に関係する酵素を阻害します。そのため、本来は分解されるはずの成分がそのまま体内に吸収されてしまうのです。通常の2〜3倍の薬をのんだような血中濃度になって副作用が起こり、最悪の場合、死亡することもありえます」(長澤さん・以下同)
長澤さんによれば、グレープフルーツによる代謝阻害は3〜4日間続き、一度食べたら、しばらくのみ合わせの悪い薬はのめない。ちなみに、果物を食べるだけでなく、グレープフルーツジュースでも同じことが起きる。
グレープフルーツによって同じ現象が起きる薬剤は幅広く、抗菌薬や抗アレルギー剤のほか糖尿病治療薬、抗高脂血症薬、抗うつ薬、睡眠薬など多くの薬がグレープフルーツとのみ合わせるべきでないものに該当する。のんでいる薬がある人は、医師か薬剤師に確認するようにしたい。血液をサラサラにするワルファリンをのんでいる人はサプリメントだけではなく、食べ物にもNGなものがある。
「ワルファリンは血液を凝固させるビタミンKの働きを抑制することで血をサラサラにしていますが、納豆や青汁、ほうれん草などにはビタミンKが多く含まれ、食べると薬の作用が打ち消されてしまう。心筋梗塞や脳梗塞の再発を招く恐れがあります」
降圧剤の服用者も要注意。
「ACE阻害薬というジャンルの降圧剤は、体内のカリウムの排出を抑制します。カリウムの多い青汁やひじき、わかめなどを摂ると、不整脈や手足のしびれなどを起こす高カリウム血症になることがある。特に腎機能が低下している高齢者は要注意です」