7月28日は、WHOが2010年に定めた世界肝炎デー。世界レベルでの肝炎ウイルスまん延防止と、病気に対する差別や偏見をなくすために設けられた。知らない人も多いが、肝炎ウイルス感染者は国内でも300万人以上とされ、日本でもWHOに呼応するように7月28日を日本肝炎デーと定めている。早期発見が重要な病でありながら、自覚症状がほとんどないため肝がんや肝硬変などに重症化しやすい肝炎についてこの機会に知ってみませんか。
“国内最大級の感染症”といわれ、現在も140万人もの患者が苦しんでいるB型肝炎。にもかかわらず、検診受検率はいまだに低く、感染がわかったときには肝不全や肝がんなど重篤な状態になっているケースも多い。また、患者やその家族に充分な補償が届いていない現実がある。こうした問題に「知って、肝炎プロジェクト」(肝炎総合対策国民運動事業)のスペシャルサポーターとして対峙してきた歌手の瀬川瑛子さんと、B型肝炎訴訟で1万3000件以上の提訴実績があるベリーベスト法律事務所の巽周平弁護士が、肝炎を取り巻く現況と、知っておくべき制度や支援について語り合った。
瀬川:母と姉がB型肝炎の感染者でした。もともとは母がウイルスのキャリアを持っていて、姉・私・弟と3人の子供のうち、姉だけが母子感染したのです。姉はそれを知ったとき、「なぜ私だけが……」と深く悲しんでいたのをいまでも覚えています。そもそもなぜ、母子感染する子供とそうでない子供がいるのでしょうか。
巽:母子感染は、新生児が出産時に産道で母親の血液に触れ、皮膚にできた小さな傷などを介して粘膜にB型肝炎ウイルスが入ることにより生じます。母親のウイルス量が減少した状態であったり、たまたまウイルスが赤ちゃんの粘膜に入らなければ母子感染しないことはあり得ます。ウイルスの量は年を重ねると低下する傾向にあるため、一般的には長子ほど母子感染しやすいとされています。
瀬川:感染しても、発症しないかたも多くいらっしゃるとも聞いています。実際、母は70代になるまでほとんど症状が出ませんでした。
巽:瀬川さんのおっしゃる通り、約9割は発症しません。感染しても自覚症状がない人も少なくない。発症せずに何十年も経過すると、次第にウイルスが減少して検出できなくなるケースもあるため、感染したことすら知らないまま一生を終える人もいるほどです。しかし発症すれば、慢性肝炎や肝硬変、がんに進展してしまう恐れもあります。
瀬川:手遅れになる前に、検査を受けて感染を自覚することが何よりも大切ですよね。母も姉も、もっと早く気づいて対処していれば、いまも元気だったかもしれません。