岸田文雄政権の誕生以来、鳴りを潜めていた菅義偉・前首相の存在感が高まっている。世論ではワクチン接種や携帯料金値下げといった菅政権の政策が再評価されており、安倍晋三・元首相が凶弾に倒れたことを受けて、自民党内はもとより国民の間でも、「安倍元首相の改革の遺志を継ぐのは岸田氏ではなく菅氏」という声も増えている。
岸田首相もそうした菅氏への復活待望論を牽制してか、「副総理」に起用して懐に取り込もうとする懐柔案が浮上している。もっとも、菅氏に脅威を感じているのは岸田首相だけではない。岸田氏を支持してきた大派閥では、派内にいる“菅派”の存在に神経を尖らせている。ベテラン政治ジャーナリストが指摘する。
「もっとも分かりやすいのは麻生派です。麻生太郎氏は盟友の安倍氏を失い、今後、急速に影響力を失っていく可能性がある。そうなると、もともと菅氏が立ち上げる勉強会に参加の意欲を示していた河野太郎氏が派閥を飛び出そうとした場合、それを止める求心力すら保てなくなるかもしれません。
同じく勉強会の中心となる予定の武田良太氏を抱える二階派の場合は、二階俊博氏自身が菅氏を支援する立場ですが、それはあくまで二階氏自身が主導して菅グループと同盟関係を築く前提でした。ところが、このまま菅氏の存在感が増していくと、二階氏よりも、菅氏に目をかけられている武田氏が派閥のイニシアチブを握る方向に進みかねない。ことによっては菅グループに派閥ごと吸収合併という議論すら起きるかもしれません。二階氏としては当面、派閥を維持し続けたいでしょうから、方向性をめぐって派内対立が起きる危険性があります」