今や朝ドラといえばNHKだけではないようだ。民放の朝や昼の情報番組内で、短時間の「朝ドラ」を放送するケースが増えている。そこにはどんな意味や狙いがあるのだろうか。コラムニストでテレビ解説者の木村隆志さんが解説する。
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7月19日に『ZIP!』(日本テレビ系)内のミニドラマ『泳げ!ニシキゴイ』がスタートしました。同作は月曜から金曜の毎朝7時50分ごろから放送されていることで、一部の視聴者から「もう1つの朝ドラ」などと言われています。
『泳げ!ニシキゴイ』は、昨年末の『M-1グランプリ2021』(ABCテレビ・テレビ朝日系)でチャンピオンになった漫才コンビ・錦鯉の半生を描いた物語。少年時代の貧乏生活や初恋、一家を支えた母の愛、さえない青春時代、バイト暮らしの極貧生活、母の涙と死など、ブレイクに至るまでの様子が描かれるようです。
キャスティングはメインの長谷川雅紀役にSixTONES・森本慎太郎さんと渡辺隆役に渡辺大知さん。2人の家族にも光石研さん、坂井真紀さん、伊武雅刀さん、シソンヌ・じろうさん、ヒコロヒーさんなど、実力と人気を踏まえたキャスティングが見られます。『すいか』『野ブタ。をプロデュース』『Q10』『泣くな、はらちゃん』らを手がけた河野英裕さんがプロデュースを担うことも含め、1話5分程度のミニドラマであるにもかかわらず力の入った作品と言っていいでしょう。
ただ、『ZIP!』のような情報番組内で放送されたミニドラマは同作だけではありません。近年でも、同じ『ZIP!』では『生田家の朝』『サヨウナラのその前に』。『めざましテレビ』(フジテレビ系)では『めぐる。』。『ポップUP!』(フジテレビ系)では『昼上がりのオンナたち』。『土曜はナニするの!?』(カンテレ・フジテレビ系)では『イケドラ』などが放送されました。さらにアニメではありますが、『スッキリ』(日本テレビ系)でも週明け8月1日から『がんばれ!長州くん』がスタートします。
情報番組内で放送されるわずか数分間のミニドラマにどんな意味があるのでしょうか。
コロナ禍を生きる人々に癒しを
『泳げ!ニシキゴイ』の河野英裕プロデューサーは、「『錦鯉』を取材していくと、人生何がどうなるかなんて全くわからないな、と感じます。波瀾万丈なエピソードが満載で、しかし誰にでもどこにでもある事のような気もします。バカで真面目で楽しくて哀しくて、そして面白い。1日の始まりを笑ってスタートできる!そんなドラマを毎朝お届けできるよう、みんなでがんばります」とコメントしていました。
作品の狙いが表われているのは、「1日の始まりを笑ってスタートできる」「そんなドラマを毎朝お届け」というフレーズ。これは「視聴習慣がついている人の多い朝の情報番組だからできる連ドラ」があり、「コロナ禍やウクライナ情勢などの不穏なニュースを報じる情報番組だからこそ、笑って1日をはじめられるコンテンツも届けたい」ということでしょう。幅広い年齢層からの好感度が高い錦鯉をモチーフにしていることからも、「明るいドラマにしよう」という意図がうかがえます。