――その音を自然と観客に伝えるためには、どのような工夫をされていますか?
柴崎:観ている側を音で自然と包み込むというやり方が一番いいかなと思っています。スピーカーを全て使い、サラウンドで様々な音を入れるということです。例えば山の場面では、風だったり、鳥だったり、木の葉が揺れたりとか、そういういろいろな音で包み込んであげるということです。
――多様な音で構成するというのが重要なんですね。
柴崎:人間の生きている場所って、様々な音が重なっていますからね。車が走っているからといって、車の音だけ聞こえるわけではありません。自転車に乗っている人がいればそういう音も聞こえるし、町の中にも人の歩く音があり、店によっては音楽を流しているかもしれない。そういうものが一体となっていろんな方向から聞こえることによって、環境が作られていくと思うんです。その環境を作るのが効果音の役割ですから、観客が自然に入り込んでくれたら、効果音とすれば「勝ちだぜ」と、いつも思っています。
【プロフィール】
柴崎憲治(しばさき・けんじ)/1955年生まれ、埼玉県出身。アルカブース代表取締役。音響効果の重要性を映画界に認知させた立役者の一人。「日本一多忙な音効マン」の異名も。今年公開の担当作に『大怪獣のあとしまつ』『死刑にいたる病』『峠 最後のサムライ』など。
【聞き手・文】
春日太一(かすが・たいち)/1977年生まれ、東京都出身。映画史・時代劇研究家。
※週刊ポスト2022年8月19・26日号