レール温度60度で運転中止
JR北海道は散水車の導入と並行して、レール温度の上昇を抑える工夫としてマクラギの下に敷いてある砕石や砂利といったバラストの余盛管理やレールの張り出し管理を徹底した。バラストの余盛管理とは、マクラギの端部にあたるバラストを約10センチメートル高くして自重で沈むのに備え維持管理する方法のこと。レールの張り出し管理とは、レールとレールの隙間やロングレールを想定される温度域で適正管理することをいう。これらを徹底することにより、最高レール温度の上限が52度から57度へと変更されている。
「そのほかにも、レール温度57度のときは時速45キロメートル以下の徐行とし、レール温度60度に達した時点で運転中止にするといった運転規制のルールをつくりました。また、レール温度が50度に達した時点で徒歩による特別巡回にくわえて列車巡回という監視体制を強化するようにしています」(同)
こうした安全対策を講じることにより、JR北海道のレールは散水車なしでも暑さから守られることになった。
しかし、これで一件落着とはいかない。冒頭でも述べたように夏の気温は年を経るごとに上昇を続けている。あと10年も経たないうちに、レール温度60度を超える日が続発する可能性は捨て切れない。そんな環境が訪れれば、夏は列車がまともに運行できなくなる。今のところ、JR北海道は散水車を再導入する予定はないとしているが、それも今後の状況次第だろう。
そして、これは北海道だけの問題ではない。先述したように、千葉県や九州でもレールの温度が上昇したことで輸送障害が起きている。JR北海道以外の鉄道会社からレールを冷やすために散水車という話は聞こえてこないが、今後は夏の酷暑という新たな問題に鉄道業界全体が向き合わなければならなくなる。そのとき、散水車を導入するのか、それとも別の方法でレールを暑さから守るのか? 今のところ抜本的な解決策が見当たらないだけに、鉄道業界の対策に注目が集まる。