「疲れやイライラの解消には、甘い物がいちばん!」と、ストレス解消のために甘い物をストックしていたり……。この数年、コロナ禍で家にいる時間が増え、以前にも増して甘い物に手を出すようになったという声が多い。でも、甘い物の食べすぎは、体重増加はもちろん、さまざまな病気を引き起こすきっかけになるのです。あなたも、いつの間にか、甘い物に取り憑かれた“シュガージャンキー”になっていませんか? 甘い物に依存してしまうことの危険性について紹介する。【前後編の前編】
身近に忍び寄る砂糖地獄への道
「砂糖は不足しても摂りすぎてもよくない」と、糖尿病専門医の市原由美江さんは言う。
「砂糖に含まれるブドウ糖は、不足すると低血糖を起こし、ふらつきやめまいの原因にもなります。また、ブドウ糖は脳にとっても大切な栄養源なので、砂糖は必要な栄養分です。しかし、問題は摂りすぎること。砂糖をたっぷり使った甘い物を毎日のように大量に摂取し、次第に砂糖なしでは生きられなくなってしまった依存状態を“シュガージャンキー”と呼んでいます」(市原さん・以下同)
ジャンキーとは「麻薬依存症」のことだが、これに例えて、砂糖依存の人はシュガージャンキーと呼ばれている。それだけ危険だということだ。
なぜ人は、そこまで甘い物に依存してしまうのか。そのメカニズムについて、市原さんは次のように説明する。
「砂糖は、ブドウ糖と果物に含まれる果糖が結合してできたもの。摂取すると小腸で分解されてブドウ糖になり、肝臓を経由して運ばれ、体のエネルギーになります。
人間にとって必要な栄養ではあるものの、大量に摂りすぎると血糖値が急激に上昇してしまう。すると、それを下げようと体内でインスリンが大量に分泌されるため、急激に血糖値が下がりすぎることがある。こうなると低血糖の状態になってしまいます」
急激に低血糖になると、脳は「体内が飢餓状態にある」と判断。異様な空腹感を引き起こし、少し前に食べたばかりなのに、また甘い物を食べたいと脳が要求するようになる。
「低血糖の状態になると、異様な空腹を感じる以外に、イライラしたり、怒りっぽくなる人もいます。そして倦怠感が起き、それを解消しようとして、また甘い物を食べるようになる。この繰り返しでシュガージャンキーになってしまうのです」
精神科医の飯塚浩さんは、甘い物を食べて一瞬、元気になったように感じるのは、「“シュガーハイ”、つまり砂糖を摂ってハイ(興奮)状態になっているから」と、説明する。
「以前から砂糖は麻薬に似た依存性があると指摘されています。それは、砂糖を摂るとドーパミンやノルアドレナリン、セロトニンといった脳の中の快感につながる神経伝達物質の分泌が促進されるからです。
この回路は、楽しい、幸せ、気持ちいいなどのポジティブな感情をつかさどっているため、甘い物を食べて一気に刺激されると興奮状態になり、いわゆる『ハイ』な気持ちになるのです。これは、覚せい剤のような麻薬でもたらされる効果と同じです」(飯塚さん・以下同)