春のセンバツ覇者で夏の甲子園も優勝候補筆頭とみられていた大阪桐蔭が、準々決勝で下関国際(山口)に敗退した。プロ注目の逸材が全国から集まる超強豪校だけに、高校卒業後の進路についても関心の的となる選手が数多くいるが、なかでも注目を集める一人が、3年前から“日本代表”に名を連ねていたセンター・海老根優大だろう。新刊『甲子園と令和の怪物』が話題となっているノンフィクションライター・柳川悠二氏がレポートする。
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大阪桐蔭が4対3とリードしていた9回表──1死二、三塁という下関国際の一打逆転のチャンスに、4番・賀谷勇斗の初球を打った当たりは二遊間を抜け、大阪桐蔭の中堅手・海老根優大の前に転がっていく。
同点となる三塁走者の生還は防ぎようもない。だが、海老根の肩であれば、逆転となる二塁走者の生還は避けられるかもしれない──。試合前のシートノックでは、三塁や本塁への海老根の返球に甲子園の観衆から大きなどよめきが起きるほど彼の鉄砲肩は周知されているが、そうした高校野球ファン以上に、海老根自身が刺殺を確信していたはずだ。
しかし、捕手・松尾汐恩へのワンバウンドの好返球も、判定はセーフ。内野陣が同点すら許さぬよう前進守備をとっていたため、二塁走者もスタートを切りやすかったのだろう。
そして、4対5で迎えた9回裏の大阪桐蔭の攻撃で、海老根は1死走者なしの場面で打席に立った。外角低めのスライダーをすくい上げたレフトへの鋭い当たりは、フェンスの1メートル手前で下関国際の左翼手のグラブに収まった。
9回の攻防において、逆転を許した返球も、窮地で立った最終打席も、ほんのわずか届かなかった。海老根は受け入れがたい現実に、いずれも呆然と立ち尽くした。
昨年11月の明治神宮大会を含めた秋春夏連覇を期待された優勝候補の大本命・大阪桐蔭は、ベスト8で姿を消した。