国内

東京地検特捜部「吉永軍団」の軌跡【前編】田中角栄を追い詰めた伝説の検事

田中角栄を逮捕した東京地検特捜部の陣頭指揮を執った吉永祐介氏(写真/共同通信社)

田中角栄を逮捕した東京地検特捜部の陣頭指揮を執った吉永祐介氏(写真/共同通信社)

 戦後最大の疑獄と呼ばれるロッキード事件。前首相・田中角栄を逮捕した東京地検特捜部は、陣頭指揮を執ったカリスマ検事・吉永祐介(2013年没、享年81)と、そのもとに集った精鋭たちによるチーム力で捜査の難題を次々に突破した。史上最強の検察軍団の軌跡を辿る。【前後編の前編】

 * * *
 身長160cmと小柄な体躯に、牛乳瓶の底のような眼鏡。分厚い眼鏡の奥から睨まれると、思わず身が竦むような威圧感がある──。

 この男こそ、田中角栄を追い詰めた伝説の検事、吉永祐介である。

 1976年2月、アメリカ上院外交委員会で、ロッキード社が全日空への航空機売り込みに30億円以上の不正工作資金を使ったとの証言がなされた。降ってわいた疑惑の中心にいたのが田中角栄前首相だ。「今太閤」と称されて権力の中枢にいた前首相は、全日空に口利きして5億円を収賄したとして追及される。

 マスコミは田中の疑惑を連日報じ、「逮捕せよ」との世論は高まった。

 昭和最大の疑獄の陣頭指揮を執り、田中を逮捕に追いやった吉永の素顔は今ではあまり知られていない。

 吉永は1932年、岡山県で4人姉弟の長男として生まれた。地元で勉学に勤しみ、岡山大学法文学部へ進むと在学中に司法試験に合格。1955年、大学を1年早く卒業してすぐ検事になった。東大卒、京大卒が多い検察官の中で異色の存在だった。

 1964年に東京地検特捜部に配属された後、法務省への出向を経て1975年に特捜部へ舞い戻り、43歳で特捜部副部長となる。

 吉永と終生にわたり40年近く交流した元毎日新聞記者の高尾義彦氏が語る。

「吉永さんは特捜部の礎を築き、“特捜の鬼”と呼ばれた河井信太郎氏の薫陶を受けた。誘導尋問をせず、丁寧に供述を取り、地べたを這うように証拠を集める王道の捜査スタイルを突き詰めていました。出世のため政治家に忖度することなく、汚れ仕事も厭わず事件の解明に全力を尽くす人です。

 また、部下の検事だけでなく、新聞記者にも厳しく接する人でした。それは吉永さんが事件解決を最優先に考えているから。捜査の邪魔になる記事が出ると激怒して、記事を書いた記者を出入り禁止にすることも多かった。駆け出しの検察担当だった私は、吉永さんの逆鱗に触れないようビクビクしていましたね」

関連キーワード

関連記事

トピックス

真美子さんが信頼を寄せる大谷翔平の代理人・ネズ・バレロ氏(時事通信)
《“訴訟でモヤモヤ”の真美子さん》スゴ腕代理人・バレロ氏に寄せる“全幅の信頼”「スイートルームにも家族で同伴」【大谷翔平のハワイ別荘訴訟騒動】
NEWSポストセブン
国内統計史上最高気温となる41.8度を観測した群馬県伊勢崎市。写真は42度を示す伊勢崎駅前の温度計。8月5日(時事通信フォト)
《猛暑を喜ぶ人たちと嘆く人たち》「観測史上最高気温」の地では観光客増加への期待 ”お年寄りの原宿”では衣料品店が頭を抱える、立地により”格差”が出ているショッピングモールも
NEWSポストセブン
中居正広氏の騒動はどこに帰着するのか
《中居正広氏のトラブル事案はなぜ刑事事件にならないのか》示談内容に「刑事告訴しない」条項が盛り込まれている可能性も 示談破棄なら状況変化も
週刊ポスト
離婚を発表した加藤ローサと松井大輔(右/Instagramより)
「ママがやってよ」が嫌いな言葉…加藤ローサ(40)、夫・松井大輔氏(44)に尽くし続けた背景に母が伝えていた“人生失敗の3大要素”
NEWSポストセブン
ヒグマの親子のイメージ(時事通信)
【観光客が熊に餌を…】羅臼岳クマ事故でべテランハンターが指摘する“過酷すぎる駆除活動”「日当8000円、労災もなし、人のためでも限界」
NEWSポストセブン
2013年に音楽ユニット「girl next door」の千紗と結婚した結婚した北島康介
《金メダリスト・北島康介に不倫報道》「店内でも暗黙のウワサに…」 “小芝風花似”ホステスと逢瀬を重ねた“銀座の高級老舗クラブ”の正体「超一流が集まるお堅い店」
NEWSポストセブン
二階堂ふみとメイプル超合金・カズレーザーが結婚
二階堂ふみ&カズレーザーは“推し婚”ではなく“押し婚”、山田美保子さんが分析 沖縄県出身女性芸能人との共通点も
女性セブン
山下美夢有(左)の弟・勝将は昨年の男子プロテストを通過
《山下美夢有が全英女子オープンで初優勝》弟・勝将は男子ゴルフ界のホープで “姉以上”の期待度 「身長162cmと小柄だが海外勢にもパワー負けしていない」の評価
週刊ポスト
夏レジャーを普通に楽しんでほしいのが地域住民の願い(イメージ)
《各地の海辺が”行為”のための出会いの場に》近隣住民「男性同士で雑木林を分け行って…」 「本当に困ってんの、こっちは」ドローンで盗撮しようとする悪趣味な人たちも出現
NEWSポストセブン
2013年に結婚した北島康介と音楽ユニット「girl next door」の千紗
《北島康介に不倫報道》元ガルネク・千紗、直近は「マスク姿で元気がなさそう…」スイミングスクールの保護者が目撃
NEWSポストセブン
娘たちとの関係に悩まれる紀子さま(2025年6月、東京・港区。撮影/JMPA)
《眞子さんは出席拒否の見込み》紀子さま、悠仁さま成年式を控えて深まる憂慮 寄り添い合う雅子さまと愛子さまの姿に“焦り”が募る状況、“30度”への違和感指摘する声も
女性セブン
違法薬物を所持したとして不動産投資会社「レーサム」の創業者で元会長の田中剛容疑者が逮捕された
「ローションに溶かして…」レーサム元会長が法廷で語った“薬物漬けパーティー”のきっかけ「ホテルに呼んだ女性に勧められた」【懲役2年、執行猶予4年】
NEWSポストセブン