すい臓がんは発見が難しいのに進行が早いと言われるが…(イメージ)
「沈黙の臓器」と呼ばれるすい臓。自覚症状が出にくく、すい臓がんの5年生存率はすべてのがんの中で最も低い。「発見された時には手遅れ」という事態はどうすれば避けられるのか──。
〈まさか、自分が膵臓がんとは、全く思っていませんでした〉
8月18日、日本テレビの菅谷大介アナウンサー(50)は、SNSですい臓がんを患い闘病中であることを明かした。
昨年11月の人間ドックで異常が見つかり、今年4月、4時間に及ぶ手術を受けた。診断時に自覚症状はなかったという。
すい臓がんは発見が難しいのに進行が早く、転移しやすい「難治性がん」として知られる。
菅谷アナは、医師から告知された日の夜は〈眠れなかった〉と胸中を明かしている。
女優の八千草薫さん(享年88)は2017年にすい臓がんが判明して手術を受けたものの、2019年1月に肝臓に転移し、その9か月後に亡くなった。中日、楽天などの監督を務めた星野仙一氏(享年70)は抗がん剤治療の末、がん判明から1年半後の2018年1月に逝去した。
すい臓は胃の裏に位置する長さ20センチほどの細長い臓器で、食べたものを溶かす膵液や、血糖値をコントロールするインスリンなどのホルモンを分泌する。腫瘍ができても痛みといった自覚症状が出ることが少なく、体の奥に位置するため、検査も容易ではない。
そのため生存率は全がんで最悪だ。国立がん研究センターの統計では、がん全体の5年生存率は67.5%だが、すい臓がんは12.5%にとどまる。見つかった時点ですでに手遅れのケースが多く、「死に直結するがん」として恐れられてきた。
ただ、すい臓がんから生還する人も少しずつ増えている。順天堂大学医学部附属順天堂医院肝・胆・膵外科教授の齋浦明夫医師が指摘する。
「がんの中で生存率は最下位ですが、この20年間で検査法や抗がん剤、手術法などが大きく進歩し、以前は4%しかなかった5年生存率が2倍以上になったのです。特有の自覚症状がなく、大腸がんの便潜血のように早期で診断できるポイントがない厄介ながんですが、手術ができる早いタイミングで発見できれば、治せないがんではなくなってきています」
一方で、他の臓器に遠隔転移したり、すい臓の近くを通る動脈などにがんが浸潤すると手術が難しくなるという。