生存率が高い「尾道方式」
広島県尾道市は、すい臓がんの早期発見に町ぐるみで取り組み、5年生存率を全国平均より大きく伸ばしている。「尾道方式」と呼ばれるプロジェクトだ。
中心になるのは、JA尾道総合病院の花田敬士副院長だ。
「2007年から尾道市医師会の先生たちと一緒になって、すい臓がんの早期診断プロジェクトを導入しました。まずはかかりつけ医で喫煙や大量飲酒、肥満や糖尿病など、生活習慣におけるすい臓がんの危険因子が2つ以上ある人に、検査を呼びかけてもらい、超音波検査や血液検査を行ないスクリーニングします。そこで異常が見られれば中核病院を紹介して、より詳しくすい臓全体を検査することを勧めます。そして、EUS(超音波内視鏡検査)やMRI検査で異常があれば、細胞を採取する病理学的検査などで確定診断を行ないます」
15年が経過し、尾道市ではすい臓がんの5年生存率が20%近くに伸びた。ステージ0やIの段階で発見することで、すい臓がん治療に格段の効果が表われているという。
「我々は、『がんの大きさが1センチ以内で見つける』を合言葉にしています。周りの血管や神経、臓器などに浸潤する前に、すい臓の中だけに腫瘍が存在している段階で発見できれば手術で除去できます。早期発見による外科的切除率を上げることで、生存曲線は大きく変わります」(花田医師)
現在、尾道方式は全国約30地域で導入されており、「全国的にも早期での発見率が上がってきています」と花田医師。今後のさらなる成果が期待される。
早期発見ができれば、すい臓がんは決して克服できない病ではない。何より、信頼できる医師との出会いが重要だ。
※週刊ポスト2022年9月9日号