日本で膝痛に悩む人は約3000万人といわれており、そのうち9割が軟骨の減少が原因で発症する変形性膝関節症だという。今や国民病となった膝痛だが、朝から夜までの日常生活の至るところに痛みの改善ポイントが隠されている。
日中は外出することもあるだろうが、移動時にも懸念点がある。我汝会(わじょかい)きたひろしま整形外科の原則行院長が解説する。
「車で長時間移動すると同じ膝の角度が続き、関節や筋肉が硬化して膝痛が悪化します。運転が長くなる場合は30分おきに休憩を取って足をストレッチしてください。助手席や後部座席に乗る場合、長時間座った後に車外に出ると膝が固まって痛みが出ることも。足を動かせるように、スペースのある座席や車種を選ぶことも大切です」
電車で移動するなら、“膝ピン”が欠かせない。
「電車内でやむを得ず立つ時もあるでしょう。その際、膝への負担を恐れて膝を軽く曲げてしまう。これが落とし穴なんです。電車が揺れた時に膝が曲がっていたほうが、かえって股関節や膝周辺の筋肉に大きな負荷をかける。立つ場合は、肩幅程度に足を広げ、膝をピンと真っすぐに伸ばした姿勢をキープしましょう」(同前)
膝痛を避けるにはメタボの改善も重要になる。
一般的に平坦な道を歩くだけでも、膝には体重の2~3倍の負荷がかかるといわれている。肥満になると膝への負担が大きくなって膝痛は悪化、膝の痛みで運動不足になり、さらに肥満が進む。“膝痛負のスパイラル”の完成だ。
「特にコロナ禍は自粛生活が続き、運動不足による肥満で膝の痛みを訴える患者が目立ちます。悪循環を断ち切るためにも、膝に負担のかからない運動を心がけ、肥満を解消しましょう」(同前)
とはいえ、急にランニングやジョギングを始めるのは膝痛が悪化するリスクが大きい。戸田整形外科リウマチ科クリニック院長の戸田佳孝医師が語る。
「足をなるべく高く上げて散歩すると膝の痛み予防になります。靴の中に足の外側を高くした中敷きを入れると膝の内側にかかる負荷を減らし、安全性が高まります」