恥ずかしくて人に聞けない、病院にも行けない……。そんな悩みを抱えやすいのが「下半身の病気」だ。こっそりと自力で治すのは限界があるうえ、素人判断の治療は症状を悪化させる。専門医に、正しい治療法を聞いた。
痔は、排便時に激しい痛みを伴うだけでなく、日頃から腫れやかゆみなど不快な症状がつきまとう。しかし、その不快感を我慢している人は驚くほど多い。都内在住の50代男性が語る。
「もともと便秘がちで、毎朝のトイレは苦行でした。ある日、排便が終わって流そうとしたら便器が血で真っ赤。市販の塗り薬でこっそり対応するも改善せず、最近は酒を飲むと翌朝パンツに血がついていることもあって、これはいよいよおかしいと。慌てて医者に行くと『なんでもっと早く来なかったのか』と叱られました。すでにいぼ痔と切れ痔を併発していて、酒で血行が良くなるだけで出血するまでになっていました」
痔には大きく分けると3タイプあると、しらはた胃腸肛門クリニック横浜の白畑敦院長は説明する。
「主に『いぼ痔(痔核)』『切れ痔』『痔ろう』です」
いぼ痔の原因は大きく2つに分けられ、ひとつは血管のこぶがいぼになるケースで、妊婦や便秘がちな若者に多い。そしてもうひとつはズバリ加齢だ。
「直腸の中の粘膜がたれ下がり、それが痔核になります。高齢男性のいぼ痔の多くはこれに該当します。軽度の症状も含めれば、65歳以上の高齢者の4人に1人はいぼ痔を患っています」(白畑氏)
続いては切れ痔。これも原因が2つ考えられる。
「まずは便秘です。便秘によって硬くなった便が、排便時に肛門を傷つけ、切れてしまいます」(同前)
最後は、なんと清潔に気を使いすぎることだという。
「シャワートイレを常用しているなど“肛門を洗いすぎる人”も切れ痔になりやすい。強い水流を何分間も当て続けると肛門を傷つけてしまうのです。ボディソープなどで念入りに洗いすぎるのは避けましょう」(同前)
肛門が切れると排便時に痛みが生じ、肛門の筋肉が硬直化する。それがますます便を出しにくくし、便秘を悪化させてしまうという。
最後の痔ろうは、痔の中ではレアケースだが、症状は厄介だ。
「肛門内部の肛門管と肛門周辺の皮膚の間に穴が空いて、膿の溜まったトンネルで繋がった状態になってしまう病気です。相当な痛みが生じますし、治療にはトンネルを手術で取り除く必要があります」(同前)
いずれの痔でも、日常生活で不快感を覚え、排便時に出血するという惨事がついて回ることに変わりはない。高齢になると食事の量や運動量が減ることから、それまでは快便だった人も便秘になりがちで、痔を引き起こすこともある。