【著者インタビュー】斎藤真理子さん/『韓国文学の中心にあるもの』/イースト・プレス/1650円
【本の内容】
《海外文学には、それが書かれた地域の人々の思いの蓄積が表れている。隣国でもあり、かつて日本が植民地にした土地でもある韓国の文学は、日本に生きる私たちを最も近くから励まし、また省みさせてくれる存在だ。それを受け止めるための読書案内として、本書を使っていただけたらと思う》とまえがきに記す斎藤さん。2018年12月に日本で刊行された『82年生まれ、キム・ジヨン』が大ベストセラーとなった出来事を《「降臨」》という。そこで書かれた女性の受難は多くの共感を呼んだ。『キム・ジヨン』に至るいまも輝き続ける韓国文学作品を《重い歴史》とともに遡っていく。
韓国ドラマ→K‐POP→小説の流れは「必然的」
韓国文学のすばらしいブックガイドが出た。著者の斎藤真理子さんは、チョ・ナムジュ『82年生まれ、キム・ジヨン』(筑摩書房)などを手がけた翻訳者だ。
韓国文学への関心は、『キム・ジヨン』の前から高まりつつあり、いくつかの出版社から出た翻訳が本好きの間で話題になっていた。小説のブームが来る前にまず韓国ドラマや映画の人気に火がつき、次にK-POP。最後に小説がきたかたちだ。
「必然的な流れだと思います。文学は、自分からその世界を味わいにいかないといけないので、社会や文化への理解がないまま、いきなり、摂取しても難しいんですよね。『冬ソナ』ブームぐらいのときに『キム・ジヨン』みたいな作品がもし出ていたとしても、ここまで広がらなかったんじゃないでしょうか」
ありふれた名前を持つ女性主人公の、心に変調をきたすほどの受難には、社会制度の違いを超えた普遍性があった。『キム・ジヨン』は日本でも23万部を超えるベストセラーになり、韓国文学の読者の裾野を一気に広げた。
この作品をきっかけに韓国文学を読むようになった人はもちろん、これから読んでみたい人、すでに何冊か読んだ人にとっても、『韓国文学の中心にあるもの』は確かな道しるべとなるだろう。
「いま翻訳されているのは新しい作品が中心ですけど、私としては、古い作品もぜひ読んでほしいんですね。古いものを読むことで、最近の小説や韓国ドラマも、より一層、理解できるようになると思います。韓国文学の見取り図をつくるというより、地図の根底にあるものに焦点を当てた本になりました」