待望論が高まる菅義偉前首相を中心とした“菅グループ”の結成に向けて、キーパーソンと目されるのが二階派事務総長の武田良太・元総務相である。全国紙政治部記者は言う。
「武田氏はグループの礎となる菅氏の勉強会立ち上げにはいち早く参加の意思を表明し、会合を積み重ねている。菅氏の期待も大きく、河野太郎氏と並びグループ内の総理候補とみられている」
その武田氏をめぐり、一つの疑惑が持ち上がっている。
今年7月3日、武田氏の地元・福岡県の福岡市内で、武田氏を応援する新たな後援会の設立パーティーが開催された。折しも参院選を1週間後に控えた選挙期間中だった。
武田氏も連日、応援演説で各地を駆け回るなか、パーティーは日曜日の夜、水炊きが有名な割烹で開催された。参加者に配られた案内状には、こう書かれている。
〈かねてより武田良太先生を応援する私設団体設立の準備を鋭意進めておりましたが、お陰さまで私設団体『武信会』を設立する運びとなりました〉
案内状には、入会金5万円、会費3万円とあり、『武信会』会長としてX氏の名前が書かれていた。X氏は福岡で「再生医療」のクリニックを営む経営者である。パーティーに参加したという経営者が語る。
「案内は、Xから直接LINEで回ってきました。30人近くが参加していて、私以外の参加者も経営者が多く、Xと親しいという元厚労省の幹部もいました。会費は当日現金で払い、計8万円分の領収書をもらいました。
武田先生は秘書を連れて参加していて、Xを親しげに『ちゃん』付けで呼び、Xも『良太さん』と呼んでいました。武田先生は中締めの挨拶で『自民党へ投票をお願いします』と呼びかけていました。2時間弱で1次会が終わると、Xは武田先生を中洲のクラブに誘っていて、先生は『こういうご時世だからまずくないか』と言いながら迎えの車に一緒に乗り込んでいきました」
パーティーが開かれた割烹は「コース料理が5000円台からで、飲み物を含めても1人7000~8000円程度」(店の関係者)だといい、ざっと200万円程度がX氏の元に残ったことになる。前出の参加者曰く、「会費の使い道についての説明はなかった」という。
問題はこの団体が、現時点で選挙管理委員会への届け出をしていないことだ。政治資金に詳しい上脇博之・神戸学院大学教授が指摘する。
「この団体は『武田良太先生を応援する会』なので、政治資金規正法が定める『特定の候補者を支持する団体』、つまり政治団体に該当します。政治団体が寄付を受け、あるいは支出をする場合は、選管への届け出を済ませてからでなければなりません。この団体が届け出をせずに会費を集めていたとすれば、政治資金規正法違反に問われる可能性があります」