感染には常に最大限警戒し、急ピッチで作られたワクチンを、3回、4回と接種する──新型コロナ感染者の死亡率もワクチンの副反応の出方もまったく違うにもかかわらず、日本は2年にわたって欧米に足並みを揃えて対策を行ってきたが、いまだにコロナ禍は終わらない。
オミクロン株「BA.1」に対応したワクチンの接種が始まり、この10月中には「BA.4」や「BA.5」対応型の承認も見込まれている。この終わりなき“エンドレスワクチン”の背景には、欧米の動向がある。
「アメリカでは日本に先駆けてオミクロン株対応のワクチン接種が行われており、イギリスも8月にモデルナの新型ワクチンが承認されました」(在米ジャーナリスト)
コロナ禍において、日本は常に横目で欧米を見て、感染対策やロックダウン、医療のあり方などを議論してきた。切り札とされたワクチンも、欧米に「追いつけ、追い越せ」で接種を重ねてきたが、それは果たして正解だったのか──。
そもそも日本は欧米に比べ、新型コロナウイルスによる被害が圧倒的に少ないと語るのは、新潟大学名誉教授で医師の岡田正彦さんだ。
「人口10万人あたりのコロナの死者数を比べると、アメリカが308人、イギリスは266人であるのに対し、日本は24人。10分の1以下です。同じウイルスでも欧米はケタ違いに被害が大きかったのです」(岡田さん)
南日本ヘルスリサーチラボ代表で医師の森田洋之さんが続ける。
「オミクロン株の流行により、日本は世界最高レベルの日別感染者数を記録したものの、死亡率は依然として欧米よりかなり低い。日本人に被害が少なかった理由は『ファクターX』と呼ばれ、マスクや手洗い、発音の違いによる飛沫量の差、BCGワクチンや交差免疫など、さまざまに分析されていますが、決定的な理由はいまだに明らかになっていません。とにかく、日本人は欧米と比較して重症化しにくいということは間違いなく事実だといえるでしょう」
コロナ医療の取材を続けているジャーナリストの鳥集徹さんは、世界の感染状況を振り返り、日本は欧米に追従する必要はなかったと語る。
「欧米はコロナの死者が圧倒的に多かったため、ワクチンを打つ意義が比較的大きかった。一方、死亡率の低い日本では、その意義は小さい。にもかかわらず欧米とまったく同じように接種を進める必要があったのか疑問が残ります。
それに結果的にワクチンでは感染拡大を抑えることはできなかった。世界で最も早く接種を進めたイスラエルの状況を見れば、接種後に一時的に減少した新規感染者が再び増加することは容易に予想できた。欧米の真似をすべきではなかったのです」