ライフ

「日本語警察」になりたいあなたへ 「姑息」の使い方が憂うべき状況

言葉は生きもの

言葉は生きもの(イメージカット)

 コミュニケーションは言葉あってのものだが、本来の意味と多数の人が認識している意味にギャップが生まれることはままある。コラムニストの石原壮一郎氏が考察した。

 * * *
 言葉は正しく使いたいもの。会社の同僚や後輩にせよ友だちや家族にせよ、間違った意味で言葉を使っていたら、きちんと教えてあげなければなりません。「本来はこういう意味なんだよ」と指摘すると、いいことをした気になれたり、周囲から尊敬の眼差しを向けられている気になれたりします。

 そんな快感に魅せられて、スキあらば言葉の間違いを取り締まっているのが「日本語警察」のみなさん。もしあなたが「日本語警察になりたい!」と思っているなら、まずは毎年文化庁が発表している「国語に関する世論調査」を熟読しましょう。

 9月30日に発表された最新の2021年度版(調査期間2022年1月~2月、有効回答3579人)でも、たくさんの「取り締まるべき重点ポイント」を見つけることができました。「日本語警察」を目指す方に向けて、具体的な取り締まり方をご提案します。

 着目したいのが、Ⅳ「言葉遣いに対する印象や、慣用句等の認識と使用」の章。最新版では「姑息」と「割愛する」が、憂うべき状況にあることが明らかになっています。

「姑息」は、約74%が〈「ひきょうな」という意味〉だと答えました。ところが「辞書等で主に本来の意味とされてきた」のは、約17%しか答えていない〈「一時しのぎ」という意味〉です。12年前の平成22年度の調査と比べて、〈「ひきょうな」という意味〉と答えた人が3%増えました。

 同様に「割愛する」も、約65%が〈不必要なものを切り捨てる〉という意味だと答えましたが、本来の意味は約24%しか答えていない〈惜しいと思うものを手放す〉です。11年前の平成23年の調査と比べて、本来の意味の〈惜しいと思うものを手放す〉と答えた人の割合は6%増加しましたが、〈不必要なものを切り捨てる〉と答えた人の割合はほとんど変わっていません。

 どちらも、過半数をはるかに超える人が「本来の意味ではない意味」で認識しているとなると、自分が「本来の意味」で使ったとしても、正確に伝わらない可能性が大です。空腹を訴える妻に「姑息だけど、食べる?」とチョコレートをあげたら、「なんで姑息って言われなきゃいけないのよ!」と激怒されるでしょう。

 現実にどういう意味で使われることが多いかは、取り締まり活動には関係ありません。大事なのは「本来の意味」です。「姑息」を「ひきょうな」という意味で使っている場面を目撃したら、「本来は『一時しのぎ』という意味だから、さっきの使い方は間違っているよ」と教えてあげましょう。「割愛する」の場合も同様です。

 たまたま得た知識で他人をやり込めてドヤ顔するのは、ちょっと「姑息」かもしれません。いや、この「姑息」は本来の意味ではないので、気にする必要はないですね。

関連記事

トピックス

高校時代の安福久美子容疑者(右・共同通信)
《「子育ての苦労を分からせたかった」と供述》「夫婦2人でいるところを見たことがない」隣人男性が証言した安福容疑者の“孤育て”「不思議な家族だった」
活動再開を発表した小島瑠璃子(時事通信フォト)
《輝く金髪姿で再始動》こじるりが亡き夫のサウナ会社を破産処理へ…“新ビジネス”に向ける意気込み「子供の人生だけは輝かしいものになってほしい」
NEWSポストセブン
中国でも人気があるキムタク親子
《木村拓哉とKokiの中国版SNSがピタリと停止》緊迫の日中関係のなか2人が“無風”でいられる理由…背景に「2025年ならではの事情」
NEWSポストセブン
トランプ米大統領によるベネズエラ攻撃はいよいよ危険水域に突入している(時事通信フォト、中央・右はEPA=時事)
《米vs中ロで戦争前夜の危険水域…》トランプ大統領が地上攻撃に言及した「ベネズエラ戦争」が“世界の火薬庫”に 日本では報じられないヤバすぎる「カリブ海の緊迫」
週刊ポスト
ケンダルはこのまま車に乗っているようだ(ケンダル・ジェンナーのInstagramより)
《“ぴったり具合”で校則違反が決まる》オーストラリアの高校が“行き過ぎたアスレジャー”禁止で波紋「嫌なら転校すべき」「こんな服を学校に着ていくなんて」支持する声も 
NEWSポストセブン
24才のお誕生日を迎えられた愛子さま(2025年11月7日、写真/宮内庁提供)
《12月1日に24才のお誕生日》愛子さま、新たな家族「美海(みみ)」のお写真公開 今年8月に保護猫を迎えられて、これで飼い猫は「セブン」との2匹に 
女性セブン
新大関の安青錦(写真/共同通信社)
《里帰りは叶わぬまま》新大関・安青錦、母国ウクライナへの複雑な思い 3才上の兄は今なお戦禍での生活、国際電話での優勝報告に、ドイツで暮らす両親は涙 
女性セブン
東京ディズニーシーにある「ホテルミラコスタ」で刃物を持って侵入した姜春雨容疑者(34)(HP/容疑者のSNSより)
《夢の国の”刃物男”の素顔》「日本語が苦手」「寡黙で大人しい人」ホテルミラコスタで中華包丁を取り出した姜春雨容疑者の目撃証言
NEWSポストセブン
石橋貴明の近影がXに投稿されていた(写真/AFLO)
《黒髪からグレイヘアに激変》がん闘病中のほっそり石橋貴明の近影公開、後輩プロ野球選手らと食事会で「近影解禁」の背景
NEWSポストセブン
秋の園遊会で招待者と歓談される秋篠宮妃紀子さま(時事通信フォト)
《陽の光の下で輝く紀子さまの“レッドヘア”》“アラ還でもふんわりヘア”から伝わる御髪への美意識「ガーリーアイテムで親しみやすさを演出」
NEWSポストセブン
ニューヨークのイベントでパンツレスファッションで現れたリサ(時事通信フォト)
《マネはお勧めできない》“パンツレス”ファッションがSNSで物議…スタイル抜群の海外セレブらが見せるスタイルに困惑「公序良俗を考えると難しいかと」
NEWSポストセブン
中国でライブをおこなった歌手・BENI(Instagramより)
《歌手・BENI(39)の中国公演が無事に開催されたワケ》浜崎あゆみ、大槻マキ…中国側の“日本のエンタメ弾圧”相次ぐなかでなぜ「地域によって違いがある」
NEWSポストセブン