「文法的に破格」とされているものの実際には広く使われている言葉も、道路標識が見えづらい一時停止の交差点のように、取り締まりがしやすいポイントです。最新の調査で、「文法的には破格」だけど「使うことがある」と答えた人の割合が多かったのは、次の3つ。
●「すごく速い」を「すごい速い」と言う(「使うことがある」が約59%)
●「なにげなくそうした」を「なにげにそうした」と言う(同約47%)
●「中途半端ではない」を「半端ない」と言う(同約46%)
どれも半端ない広がり方をしているので、自分自身もなにげにすごい頻繁に使っているかもしれません。……あっ。それはさておき、力を入れて取り締まることで、思わぬ効果がもたらされるシチュエーションもありそうです。
女性に「えっ、もう……。すごい早いね」と言われたら、「いや、それを言うなら『すごく早い』だよね」と教えてあげましょう。そうすることで、恥ずかしさや屈辱感をごまかせます。年頃の娘に「パパ、なにげにおっさんっぽいよね」と言われたときも、「それを言うなら『なにげなく』だ」と返せば、父親としての尊厳を守れるに違いありません。
仕事で大きなミスをして、社長に「半端ない損失を出して、どうするつもりだ!」と叱責されても、「社長、それをおっしゃるなら『中途半端ではない損失』かと」と指摘したいところ。きっと社長は何も言えなくなるはずです。部下にやり込められた悔しさで何も言えないのか、あまりの怒りで何も言えないのかはさておき。
日本語警察になれたら、このようにたくさんのメリットがもたらされます。さあ、あなたも取り締まり活動に精を出しましょう。たちまち周囲に人がいなくなるという副反応もありますが、日本語警察になれるタイプは、もとから「あの人はちょっと……」と思われています。たぶん、そういう影響を実感することはないでしょう。