日中国交正常化50周年となる今年、国内でも日中友好を祝う様々なイベントが開催されている。ところが、その陰で中国が張り巡らせている数々の“罠”に日本が絡め取られようとしていた──。ジャーナリストの峯村健司氏がレポートする。(文中敬称略)
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10月16日に始まる第20回中国共産党大会を前に、日本メディアでは新体制の人事を巡る予想記事が相次いでいる。5年に一度開催される共産党の最も重要な会議だ。今回は、共産党トップを2期務めた習近平が続投するかどうかに注目が集まっている。
筆者に言わせれば、これは焦点でもなんでもない。習の3期目続投は今夏の段階で100%確定しているからだ。
北京から東へ約280キロ離れた河北省の避暑地、北戴河で8月上旬に開かれた会合でのことだ。通称、「北戴河会議」と呼ばれ、共産党や政府の高官に引退幹部らが加わり、党の重要な政策や人事について議論が交わされる。
特に党大会が開かれる年の北戴河会議は、新政権の人事が話し合われるのでその動向を探ることは極めて重要だ。
ただ、会議の内容や期間はおろか、開かれたことすら公表されない秘密会合だ。いったい何が話し合われたのだろうか。
毎年会議に出席する引退幹部を親族に持つ党関係者に尋ねた。
「習氏の進める『ゼロ・コロナ』政策や民間企業への締め付けなどの経済政策について、引退幹部の一部から批判が出ました。しかし、続投に異議を唱える人はいなかったようです」
祖国統一を成し遂げる
続投に向けて習は着々と布石を打ってきた。
2018年に憲法を改正し、2期10年と定めていた国家主席の任期を撤廃した。この際、共産党内では、毛沢東によってもたらされた経済・社会の混乱に対する反省から、独裁回帰につながる任期撤廃には根強い反対の声があったという。
任期撤廃について習が党内を説得した最大の材料が台湾問題だった。中国軍系シンクタンク研究者は、当時の舞台裏を解説する。
「習主席は自分が責任を持って祖国統一の偉業を成し遂げると強調しました。ただ、そのためには10年では時間が足りないとも語り、任期延長の必要性を説きました」
これを機に習の台湾政策は強硬路線に傾く。
「台湾独立は歴史に逆行しており、破滅する。中国人は中国人を攻撃しない。しかし、外部勢力による干渉や独立分子に対しては、武力行使の放棄を約束しない」
2019年1月の演説では、これまでの「平和統一」から軍事力を使う可能性に言及したのだ。