翌2020年10月の演説では、習は次のように強調した。
「訓練と戦争への備えを全面的に強化し、国家の主権、安全、発展の利益防衛の戦略能力を高め、2027年までに軍創設100年の奮闘目標を実現する」
習の総書記3期目の任期が終わるのが2027年。ちょうど中国軍創設100年と重なる。この発言の真意について、前出の中国軍系シンクタンク研究者が解説する。
「『台湾解放』を念頭に置いた発言です。これまで米国などが呼びかける『平和的統一』を我が国が受け入れてきたため、結果として祖国分裂の状態が長年続いてきました。この状況を打破するため、習主席は台湾問題について受け身の姿勢ではなく、積極的に解決に動く姿勢を明確に示しました。3期目のうちに台湾問題を解決することを内外に約束した形です」
今回の党大会で、共産党規約が改正され、「祖国の完全統一」が盛り込まれることで調整が進んでいる。
3期目を決めた習は、「台湾統一」という公約を果たすための具体的な行動をとることを求められている。
近代化を進める中国軍
では、本格的に動くのはいつか。筆者が特に注視しているのが、2024年だ。
1月には台湾総統選がある。中国と距離を置く民進党総統の蔡英文は2期の任期を終え、新たな民進党候補と国民党候補が争う。台湾アイデンティティの高まりとともに、中国寄りの国民党離れが進んでおり、民進党候補が有利とみられている。
台湾では、1996年に直接選挙による総統選が始まってから、国民党と民進党の総裁が2期ずつで交互に入れ替わってきた。もし慣例を破る形で民進党候補が3連勝すれば、中国は「台湾独立行為」という口実をつくって攻勢を強める可能性がある。
さらに同年11月には、米大統領選も控えている。
現大統領のジョー・バイデンは、経済政策の不発から人気を落としている。再選すれば82歳という高齢による健康問題も懸念される。捲土重来を期す前大統領のドナルド・トランプも再出馬に意欲をみせている。
2020年のように接戦となって結果を巡り混乱が生じれば、好機とみた中国が行動に踏み切る可能性も否定できない。