ネットなどで話題を集める注目作も出てきた今クールの秋ドラマ。特徴的なのは脚本家に女性が多いということ。実に7割近くの作品を女性脚本家が手がけているのだ。これは今年に入ってから見られない傾向だ。コラムニストでテレビ解説者の木村隆志さんがその背景について解説する。
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24日放送の『エルピス ―希望、あるいは災い―』(カンテレ・フジテレビ系)で秋ドラマが出そろいますが、目につくのは女性脚本家が手がける作品の多さ。
ゴールデン・プライム帯の新作ドラマを見ていくと、『PICU 小児集中治療室』(フジテレビ系、月曜21時)を倉光泰子さん、『エルピス』(月曜22時)を渡辺あやさん、『つまらない住宅地のすべての家』(NHK、月~木曜22時45分)を池田奈津子さん、『君の花になる』(TBS系、火曜22時)を吉田恵里香さん、『ファーストペンギン』(日本テレビ系、水曜22時)を森下佳子さん、『ザ・トラベルナース』(テレビ朝日系、木曜21時)を中園ミホさん、『silent』(フジテレビ系、木曜22時)を生方美久さん、『クロサギ』(TBS系、金曜22時)を篠﨑絵里子さん、『アトムの童』(TBS系、日曜21時)を神森万里江さんの9人が手がけています。
一方、男性脚本家は、『親愛なる僕へ殺意をこめて』(フジテレビ系、水曜22時)を岡田道尚さん、『一橋桐子の犯罪日記』(NHK、土曜22時)をふじきみつ彦さん、『祈りのカルテ ~研修医の謎解き診察記録~』(日本テレビ系、土曜22時)を根本ノンジさん、『霊媒探偵・城塚翡翠』(日本テレビ系、日曜22時30分)を佐藤友治さんの4人のみ。計13作中9作の69%を女性脚本家が担う形になっています。
今年放送された各クールを振り返ると、1~3月の冬ドラマは12作中6作のちょうど50%、4~6月の春ドラマは14作中9作の64%が男性脚本家、7~9月の夏ドラマは12作中11作の92%が男性脚本家だっただけに、明らかな逆転現象が起きています。
今秋ドラマに女性脚本家がこれほど集中しているのは、どのような理由があるのでしょうか。
連ドラデビューの新人を大抜てき
今秋のドラマを手がける女性脚本家9人の顔ぶれを見ていくと、大御所、中堅、若手がバランスよくそろっています。
大御所は、『ドクターX~外科医・大門未知子~』(テレビ朝日系)、『やまとなでしこ』(フジテレビ系)、『花子とアン』『西郷どん』(NHK)などを手がけた中園ミホさんと、『JIN-仁-』『とんび』『天皇の料理番』『義母と娘のブルース』(TBS系)、『ごちそうさん』『おんな城主 直虎』(NHK)などを手がけた森下佳子さん。
また、『カーネーション』『ロング・グッドバイ』『今ここにある危機とぼくの好感度について』(NHK)などを手がけた渡辺あやさんは、ファンの多いベテラン脚本家ながら民放連ドラは初めて。さらに『クロサギ』『グッドワイフ』(TBS系)、『まれ』『紙の月』(NHK)などを手がけた篠崎絵里子さんも実績十分の女性脚本家です。
中堅と若手にも、『刑事ゆがみ』『アライブ がん専門医のカルテ』(フジテレビ系)、『うきわ -友達以上、不倫未満-』(テレビ東京系)などを手がけた倉光泰子さん、『砂の塔~知りすぎた隣人』『アルジャーノンに花束を』(TBS系)、『君と世界が終わる日に』(日本テレビ系)などを手がけた池田奈津子さん、『花のち晴れ~花男 Next Season~』(TBS系)、『30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい』(テレビ東京系)、『恋せぬふたり』(NHK)などを手がけた吉田恵里香さん、『この恋あたためますか』(TBS系)、『やんごとなき一族』(フジテレビ系)などを手がけた神森万里江さんら、このところ精力的に書き続けている女性脚本家がそろっています。
そして特筆すべきは昨年、脚本家最大の登竜門である『フジテレビヤングシナリオ大賞』で大賞を受賞したばかりの生方美久さん。連ドラの脚本は初めてであり、29歳の若さも含め、異例の抜てきであることは間違いありません。
その生方さんの抜てきに、「なぜ今秋、女性脚本家がこれほどそろったのか」の理由が潜んでいます。