支持率急落に歯止めがかからない岸田文雄・首相は、政治生命にかかわる大きな賭けに出た。それまでの慎重姿勢を一転させ、宗教法人を所管する永岡桂子・文科相に旧統一教会(世界平和統一家庭連合)に対する解散請求を前提にした「質問権」発動を命じたのだ。
宗教法人法では、その宗教団体に「法令に違反して、著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為」などがあった場合に所管庁に質問権を認めている。文科省(文化庁)が調査でそうした行為があったと判断すれば、裁判所に宗教法人の解散を申し立て、裁判所が審理して解散を命じる。
これまで質問権が発動されたことはないが、岸田首相は国会で、「判決が出る前に解散請求の手続きに入る選択肢もありうる」と言明した。
旧統一教会との再三の「絶縁宣言」をしても国民の不信感を拭えないとみて、教団の解散命令請求に踏み込む構えなのだ。政治ジャーナリスト・野上忠興氏が指摘する。
「国民は今回の質問権の発動を『岸田首相は旧統一教会をつぶす覚悟を決めた』と受け止めたはずです。もし、解散させることができなければ、首相への信任はいよいよ失墜し、政権を維持できなくなるでしょう。首相は教団解散の成否にクビを賭けることになった」
ルビコン川を渡ったのだ。
“汚染議員”の処分
だが、旧統一教会の解散には大きな壁が立ちはだかっている。そのひとつが、岸田内閣そのものが多くの“教団汚染大臣”を抱えていることだ。
岸田首相は自民党と旧統一教会との「絶縁」を宣言し、8月の内閣改造にあたっては各大臣などに同教団との関係を申告させ、関係を認めた大臣、副大臣など政務3役14人を交代させた。とくに深いつながりが指摘されていた萩生田光一・前経産相は国会で追及されないように重要閣僚級ポストの自民党政調会長に横滑りさせて閣外に出し、追及から逃がしてやる人事まで行なった。