「チャイニーズドラゴン」の乱闘事件が起きた池袋のサンシャイン60(写真/共同通信社)
都心のど真ん中で半グレたちが大暴れした。東京・池袋で起きた「チャイニーズドラゴン」の乱闘事件は、暴力団排除の進む日本社会で、いまなお無法者たちがのさばる現実を物語る。カタギも組員も関係なく手にかける最恐の集団はいかにして生まれ、どこへ向かうのか。【前後編の前編】
「ガシャン」とグラスが割れる音に続き、怒号が響き渡る。黒マスク姿の男性集団の殴り合いは、突然始まった。
酒瓶とナイフ、フォークが飛び交うなか、テーブルはひっくり返り、ドアが破壊される。騒乱のなか、慌てて110番通報する店員。だが警察が踏み込む前に、その集団は蜘蛛の子を散らすように退散していた──。
10月16日午後6時半、池袋の「サンシャイン60」の58階にあるフレンチレストランで、約100人の団体客による乱闘事件があった。
「当日は不良グループの『チャイニーズドラゴン』が幹部の出所祝いを開いており、そこに集結したメンバー間でトラブルが起きたと言われています。最初は10人前後の小競り合いだったが、ヒートアップして全体を巻き込む殴り合いになったらしい。一方、当初店内にいたのは別の不良中国人グループで、そこにドラゴンのメンバーが合流して喧嘩になったという情報もあり、全容の解明はこれからになりそうです」(全国紙記者)
現場となった店内には散乱した酒瓶や食器に交じり、多数の血痕が残されていた。
「負傷者は1人と報じられているが、警察突入時に残っていたメンバーはわずか数人で、そのなかの1人が搬送されただけ。実際には複数人が負傷していたが、彼らは警察の厄介になることを避けるので、捜査員が来る前に退散して各々で病院に向かったとみられる」(同前)
嘲りとイジメ
チャイニーズドラゴンとは警察側の呼称で、その源流は1980年代に中国残留邦人2世、3世を中心に結成された不良グループ「怒羅権(ドラゴン)」にある。暴力団に詳しいライターの鈴木智彦氏が語る。
「残留孤児の多くが暮らした東京の葛西で、学校でのいじめや差別に苦しむ者たちがどこからともなく集い、自然発生的にできたグループだったと言われています。最初期のメンバーは10数人で当初はリーダーもいない緩やかなチームでしたが、そのうち日本語の堪能なメンバーが集団を主導する立場になっていったようです」