サンシャイン60にパトカーが集結した(時事通信フォト)
怒羅権の創設メンバーの一人、汪楠(ワンナン)氏は自著『怒羅権と私』(彩図社)で結成時の原風景をこう綴っている。
〈日本人同級生たちの嘲りは、やがて積極的ないじめへと変わっていきました。(中略)学校の帰りに殴られたりする残留孤児2世が大勢いました。日本語が分からなくても悪意のある言葉は分かります。泣く者もいれば思いつめて自殺する者もいました〉
〈いじめてきた不良を殴り返したら、仲間の上級生を呼んでくるようになります。上級生とやりあううちに学校の外の暴走族が呼ばれるようになります。暴走族に襲撃されるようになると、私たちも登下校のときに固まって行動するようになり、やがてチームになっていきました〉
怒羅権という名前は「日本社会への怒り」「残留孤児の団結」「権利」を表わすとされてきたが、汪氏は自著で「デマだ」としてこう明かす。
〈当初は「龍達人(ロンデイツオンレン)」という名前をつけていました。龍の末裔という意味です。しかし、いざ書いてみると中国語の簡体字であったため、日本人は誰も読めません〉
そこで龍を英語にしたドラゴンに漢字を当てたのだという。
葛西の一角で差別と貧困に苦しんだ少年たちは、その後、暴力団も恐れぬ凶悪集団になっていく。
(後編につづく)
※週刊ポスト2022年11月4日号