個人で使用しているスマートフォンやパソコンの中身だけは、絶対に誰にも見られたくない──そんな人も多いのではないだろうか。恥ずかしい写真や日記など“墓まで持っていくべき秘密”が、スマホやパソコンには記録されているのだ。しかし、故人のパソコンやスマホから、そういったファイルが見つかってしまった場合、図らずも遺族が大きなショックを受けることも少なくない。57才パートの女性が、夫のパソコンから見つかった謎のファイルに関するエピソードを明かす。
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結婚30年目の真珠婚を盛大に祝おう、と話していたのは去年のこと。まさか夫が59才の若さで亡くなるとは思ってもいませんでした。心筋梗塞でした。
無口ですがやさしくて、私のお願いはなんでも聞いてくれた夫。その早すぎる死に、私はしばらく立ち直れずにいました。
とはいえ、娘と協力して相続手続きは早々に済ませました。遺産と呼ぶべきものは築30年のマンションくらいでしたし、2人の子供を大学まで出したばかりなので貯金はスッカラカン。手続きはあっさり終わりました。定年もまだですし、これからふたりで働いて貯金をし、老後資金を作りつつ旅行に行こう、なんて言っていたのが昨日のことのよう……。
四十九日を迎え、納骨法要を終えた後、夫と会話をするような気持ちで彼の専用パソコンを開きました。
そこには、子供たちが小さかった頃の写真やペットの写真、夫の趣味の野鳥観察の記録などがありました。最初は微笑ましい思いで見ていたのですが、あることに気づきました。
私との写真がない──。
訝しみながら、すべてのファイルを1つずつ開いていくと、「デスノート」という名のワードファイルが出てきました。開いてみようとしても、パスワードがかかっています。夫の誕生日や私の誕生日、娘たちの誕生日などを入れても開かず、最後に2年前に亡くなった夫の愛猫の誕生日を入れたところ、開きました。
目を疑いました。それは日記のようでしたが、私の悪口がびっしりと書かれていたのです。最も古いものは1人目の子供が生まれた直後でした。
「箸の持ち方が悪く、食べ方が汚い。これを子供たちには見せたくない」
「化粧が下品。白塗りに赤い口紅で化け物か」
「先のことをまったく考えず、感情でモノを言うバカもの」
「順序だてて考える賢さがないから、準備にもたもたと時間がかかる」
など……日常生活で私に対してイラッとしたのであろうことが事細かに書かれていました。主語こそ書かれていませんでしたが、私に間違いないでしょう。