放送作家、タレント、演芸評論家、そして立川流の「立川藤志楼」として高座にもあがる高田文夫氏が『週刊ポスト』で連載するエッセイ「笑刊ポスト」。今回は、阿川佐和子と落語関係の人物との対談だけをまとめた本についてつづる。
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落語通、演芸マニアのあいだでもジワジワと話題になっているのが『阿川佐和子の この噺家に会いたい』(文春ムック)。評論家みたいなのが書くつまらない噺家論ではなく、阿川が直接きいた臨場感あふるる生の言葉の応酬にワクワクドキドキする。幼い頃よりあのきびしい父(高名なる作家。自分で調べて)からいつも叱られた。「本を読まない人間は立派な大人になれない」「お前がダメなのは、本を読まないからだ」「落語を聞きなさい。下手な小説を読むよりよほど日本語の勉強になる」
こうして育ち、志ん生をきくようになり、二十代になると両親ともども新宿の紀伊國屋寄席に通うようになる。
そりゃ耳もこえてくる。「聞く力」は、この頃に育まれたと思われるが、この本の中で私から「本当に聞く力無いなっ!」と恫喝されているアハハ。
あの週刊誌で長いことやっている対談シリーズの中から落語関係の人物だけをまとめた「密」すぎる一冊。故人になった師匠も多く、行間からそのブレス、声のクセなどがきこえてくる。
人間国宝・柳家小さんが傑作。対談場所に諸事情で遅れて行った阿川一行。小さん師匠は顔まっ赤(ゆでダコの形態模写が抜群だったしな)。怒っている様子だが話している内にうけているのを感じ上機嫌になってくる。すっかり喋ってもらい「今日は遅れてしまって申し訳ありませんでした」と言ったら、想い出したのか、またプーーッとふくれ出した。阿川は学んだ。「一度お詫びをしたら二度と話をぶり返してはいけない」。
私の好きなフレーズ。阿川が「談志さんは最初は住み込みですか」これに小さんが「通いだよ。弟子入りに来て最初の日に仏壇の食い物つまんで食ったのはあいつだけだ」師弟ともどもいいですねぇ。