女性器・男性器の美容整形、ED治療など“下半身の悩み”を専門とする井上裕章医師。外科医としてキャリアをスタートしながらもその道に進んだきっかけは、ある女性患者の悩みに直面したことだった。
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初期研修を終えて専門を決めた時、死に至る病気の代名詞的存在であるがんを自分の手で治療する外科医を目指しました。そして配属されたのは、骨盤臓器と呼ばれる直腸や肛門、卵巣、膣、男性器などの手術をメインにした外科でした。
4~5年勤めたのですが、当時、直腸がんの患者さんで、オペをすれば助かるにもかかわらず、手術を頑なに拒む女性に出会いました。その理由は私の予想を遥かに超えたもので、「女性器の見た目にコンプレックスがあるから誰にも見られたくない」というものでした。
手術となれば、たしかに全裸になり、女性器もスタッフに見せなければいけません。大なり小なり恥ずかしがる人はいても、それでがんの手術を拒むケースは初めてでした。そのような価値観に出会ったのは衝撃でした。
結局、その患者さんは女性器形成の手術を受けてからがんの手術を受けて成功したのですが、医者として「命を助けるのが最優先」と考えていた自分の考えが、傲りだったのではないかと自問するようになったのです。
そこから美容外科医に転科し、女性器の手術や男性器のED治療などを専門に扱うようになりました。
女性だけでなく、男性でも自分の男性器を見られたくない、という人はいます。治療拒否までいくケースは稀ですが、手術の時に「俺、包茎だから誰にも見せないで」と言われて、「それは無理ですよ」と話すことはあります。手術台では全裸になりますからね。