NHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』で宿老13人の1人、大江広元役を演じる栗原英雄は、時代劇から海外作品の舞台まで幅広い役柄をこなす俳優として知られる。ファッション好きを自認し、演じる役や時代背景によって普段着のスタイルも変えるという栗原が、その徹底ぶりや『鎌倉殿』撮影現場での様子を明かした。
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『鎌倉殿』には第12回から登場し、最終話の第48回(12月18日放送)まで出演します。昨年10月にクランクインしてから丸一年、大江広元役を演じてきました。撮影現場に入る時はジャージが多いですね。和かつらを着けるので、着替えやすい前開きの服がいいんですよ。リハーサル・休憩用には浴衣や作務衣を持っていきます。
浴衣を着ていると和装の歩き方、立ち座りが身に付きますから、『鎌倉殿』で共演する方々も撮影が始まったばかりの頃は、控室などでは浴衣姿が多かったですね。なかにはデニムの浴衣を着ている女優さんもいらっしゃいました。
撮影では草履を履くため、この1年、プライベートではつま先部分にゆとりがある幅広のビルケンシュトックの靴を履いていました。その時代の人らしく少しでも見えたらいいかなぁと。
スーツを着る役柄の時は、稽古場でもジャージの上にジャケットを着用し、革靴を履くことがあります。2023年3月からロンドンが舞台のミュージカル『ジキル&ハイド』に出演するので、『鎌倉殿』が終わった後の普段着は役作りの一環でロンドン風になるのかな。ヒールがある、幅が細めの靴を履くようにするかもしれません。ファッションは常に“仕事ファースト”です。広元を演じている間は、普段着も役柄に合った緑系などの色の服を着るようにしていました。
『鎌倉殿』は現場もおもしろかったですよ。メイクをしていた時、同じくメイク中だった小栗旬さん(北条義時役)に突然「何が好きですか?」と聞かれ、「そばかな」と答えたんです。その後、メイクを終えて撮影現場に入ると、小栗さんが着けているマスクに「広元殿はそばが好物」と書いてあって、「えっ?」と驚き、大笑いしました。
ある時期は毎朝、メイクの時間が小栗さんと一緒だったのですが、ふと見ると小栗さんは毎日ご自身のマスクに何かを書いているんですよね。書くネタがない日は、グーグルで「今日は何の日?」と調べて、それをマスクに書いていたこともありました。時には若手のスタッフさんを励ますような言葉を書いたりと、現場を和ませることに努めていらっしゃいました。
私自身が現場で気を付けていたのは、役柄的にあまりベラベラとしゃべらないようにしていたことです。広元は「冷静にして冷徹」というクールで極めて有能な官僚ですから。控室でみんなが話していても、聞くことに徹し、たまに少し話すという感じにしていました。