子供の肥満は大人になっても継続する可能性が高い、と小児科専門医で、小児肥満外来を設けている『武蔵小杉森のこどもクリニック』院長の大熊喜彰さんは指摘する。
「子供たちの肥満が軽度・中等度であったとしても軽視できません。なぜなら、そのうちの約45%は大人になっても肥満傾向が続くからです。さらに、高度肥満の子供たちの75%は成人後も肥満になるといわれています。
肥満は動脈硬化を進行させ、脳卒中や心筋梗塞のリスクを高めます。つまり、肥満の子供は、成人病など寿命の縮まる病気に罹患する確率が将来的に高くなる恐れがあるのです」(大熊さん・以下同)
ちなみに、「肥満傾向の子供」といった場合、標準体重より20%以上重い子供を指す。その数は、コロナ禍以降、ほぼ全学年で増加しているという。
「国は2020年春、全国の小中高校などに一斉休校を要請し、それが解除された後も部活動などを制限する策をとりました。その結果、子供たちの“おうち時間”が増加したわけですが、もともと運動の嫌いな子は体育すらしなくなり、運動好きな子も『外に出ちゃダメ』と言われ、体を動かす機会が減った。子供にとって大事な発育期に運動習慣がストップすることとなってしまった影響はとても大きいです」
肥満以外にも懸念されることがある、と大熊さんは言う。
「実は、高血圧や糖尿病などの合併症であるメタボリック症候群【*1】と診断される子供が約20%います。さらに、痛風の予備軍となる高尿酸血症の子供もいます。
命にかかわる病気で子供が長く生きられないのは非常に不幸なことで、日本社会にとっても大きな損失になります」
【*1 腹囲から内臓脂肪の蓄積を確認した上で、高血圧・高血糖・脂質異常のうち2つ異常がある場合、「メタボリック症候群」と診断される】
では、こうしたコロナ禍の影響を被る子供のために家庭はどんな対策をとるべきか?
「肥満を予防するためには、子供の頃から食事なり運動なりで自分の体重をセルフコントロールするマインドと習慣を育てる必要があります。
低年齢なら鬼ごっこのような遊びの要素を取り入れ、中学生以上なら民間スポーツクラブや学校の部活に入部させるのもいいでしょう」
運動すると体の代謝能力を一定以上に保つことができ、筋力もつく。心を強くする面もある。