記者が訪れたのは平日の昼間だったが、参拝者が後を絶たない。女性3人組、スーツ姿の男性、女子高校生……。ママ友のグループで来たという30代の女性は、
「なかなか離れてくれないこのぜい肉と別れたくって」
などと笑う。一方で深刻な顔で祈願する人もいる。境内が狭いため、1組が参拝している間は、鳥居の外で待っているのがマナーになっているように見受けられた。訪れた人に話を聞いてみると、
「すみませんが……」
と足早に通り過ぎる人もいれば、豪快に笑いながら答えてくれた人もいる。そのひとりがS代さん(42才)だ。
「ここに参拝したおかげで、不倫夫と離婚できたの。今日はね、お礼参り」
と、せいせいした顔で話してくれたが、詳しく聞くと、相当な苦労が垣間見えた。彼女の夫は生活費を払わずに不倫を繰り返したため、離婚を切り出したところ、逆ギレして拒否。不倫の証拠がつかめなかったことから、10才の息子の親権を巡って泥沼の調停に。そこで1回目の調停後、電車で2時間かけてお参りに来たという。すると、半年もせずに夫に新たな愛人ができ、その不倫の証拠はつかめたため、離婚が成立。夫も彼女たち親子への関心をなくしたのか、急に連絡が取れなくなったという。
また、ここは職場の人間関係を切るのにご利益があると知られているせいか、そういった願いをしに来る人も多い。T子さん(56才)は、同僚と一緒に参拝に来た。
「ある女性社員がいてね、とにかく嘘をつく、人のせいにする、そのくせ男性上司への媚びがうまくって……彼女の尻拭いが大変なんです。あいつ、いなくならないかなって思っていたら、ここの噂を聞いて。ダメもとで来ました」
榎の下は、ただいるだけで癒される。だからこそ、気軽にお願い事をしたり、ストレスを吐き出したりできる民間信仰の場になったのだろう。
【プロフィール】
占い師・流光七奈さん/スピリチュアルリーディングを中心に、オリジナル占術で鑑定を行う。主な著書に『厄除け・開運・パワースポット ニッポンの神社2019-2020』(主婦の友社)など。
※女性セブン2022年11月24日号