福岡国際センターでは、観客上限を設けないかたちで大相撲九州場所が開催されている。両国国技館で開かれた9月場所は入場者数の上限を通常の87%に設定するかたちだったのが、今場所では緩和されている。ただ、「満員御礼」の垂れ幕はなかなか下がらず、しかも空席が独特の配置になっているのだ。何が起きているのだろうか。
九州場所が開催されている福岡国際センターの定員は6976人で、初日は約8割にあたる5400人が来場。2日目は4039人、3日目は4116人、4日目が4530人と、平日は定員の6割前後の入りとなっている。協会関係者はこう言う。
「福岡国際センターは、国技館(1万1000人収容)に比べてキャパは小さいが、国技館に似た屋根の形をしていることから『ミニ国技館』とも呼ばれる。実際、大相撲のためにつくられた建物で、研修室が東西の支度部屋となり、風呂もトイレも完備されている。客席は国技館より緩やかな傾斜になっており、マス席も国技館より広くつくられている。ペアシートなどの設定もあります。
ただ、他の場所と違って茶屋がなく、チケットは基本的に福岡国際センターの窓口かチケットぴあなどで買うしかない。国技館開催などではチケットの半数を茶屋が扱っているが、そこが営業しないために、九州場所は他の場所に比べて満員御礼になりにくい。これまでも満員御礼が途切れるのは九州場所ということが多かった」
新型コロナウイルスの感染拡大は、相撲の興行にも大きな影響を与えてきた。2020年3月の春場所は無観客で行なわれ、続く夏場所は中止となった。その後、本来は地方開催の本場所を、国技館開催としたうえで入場制限するなどして続けてきた。今年になってからは3月の春場所が通常の定員の75%、5月の夏場所を87%にまで増やし、7月の名古屋場所では観客制限をなくした。国技館での9月の秋場所ではそれが87%に戻り、今回の九州場所で再び制限をなくしたという経緯だ。
コロナ禍の影響でどこの場所もなかなか満員に届かなかったが、この間の客席に共通する「現象」がある。国技館やドルフィンズアリーナ(愛知県体育館)では、NHKの大相撲中継で土俵が大写しになっていると、“砂かぶり”と呼ばれるタマリ席や、そのすぐ後ろのマス席はコロナ前と同じすし詰め状態だが、カメラが引いて会場全体を写すと「後方のマス席」は誰も座っていないのだ。そして、そのさらに後ろに位置する「椅子席」は満員状態となっている。ちょうど帯状に空席ができているのだ。春場所が開催されたエディオンアリーナ大阪(大阪府立体育館)は東西のマス席が6段しかないため目立たたないが、やはり同様の現象が見られた。
販売規制をしているのかと協会関係者に確認すると、「通常通り販売しているのだが……」と首を傾げる。