ライフ

【オバ記者が病床に伏して考えたこと・第2回】手術後にきつくなった食事タイム

「卵巣がんの疑い」で手術を受けたのは10月上旬。その前日、落ち着かない気持ちを鎮めようと病室(下)で自撮りした

「卵巣がんの疑い」で手術を受けたのは10月上旬。その前日、落ち着かない気持ちを鎮めようと病室(下)で自撮りした

「やってみなければわからない」が口癖の女性セブンの名物ライター“オバ記者”こと野原広子さんだが、やってみたくないこともある。その筆頭が病気だ。オバ記者が体調に異変を感じたのは、昨年8月。下腹部が膨らみ、重度の倦怠感や尿漏れに悩まされ続けたが、約1年間放っておいた。この夏、意を決して検査を受けたところ、「卵巣がんの疑い」と告げられ、一も二もなく入院、手術。そこで見たこと、感じたこととは。【第2回。第1回から読む

 * * *
 手術室に入って真っ先に目に飛び込んできたのは、医療ドラマでおなじみの、巨大な銀色の傘の中に電球がいくつもついている照明。その真下に殺風景な手術台があって、「じゃ、ここに寝てください」と言われた。そうか。自分で靴を脱いでベッドに横になるのね。続いて、医療スタッフ全員がかぶっている青いキャップを、横になった私もかぶせられた。キャップとマスクに顔を覆われ、目だけギロリと出した麻酔医が私の顔をのぞき込む。執刀主治医、看護師、部屋の隅にはそれまで診察してくれた担当女医が真剣な顔で座っている。

 私をリラックスさせるためか、麻酔医が「何か注文はありますか?」と聞いてくれたので、「ネットで見たら、目覚めに多幸感を味わえる全身麻酔薬があるそうですね」と言うと、「ありますよ。それにしますか?」「お願いします」―そんな会話を交わした後、「ではふつうに呼吸してくださいね〜」と麻酔用のマスクで鼻と口を覆われたら……あとは…………ZZZ。

「野原さーん、終わりましたよ〜」と、夢うつつの中で話しかけたのは医師か看護師か。

「姉ちゃん、じゃ、帰っから」と弟の疲れた声が聞こえたような気がしたけど、それも現実感がない。それ以上に体が私の人生史上体験したことないほど重たいというか、自分の意識と体がバランバラン。

 手術に要する時間は、お腹を開いてみた結果次第で、3コースに分かれることになっていた。「良性腫瘍」ならば2時間、「境界悪性腫瘍」なら6時間、「悪性腫瘍(卵巣がん)」なら8時間かかると説明されていた。

 術後、頭が朦朧としている私に担当医が言った。

「境界悪性でした。リンパを切除する必要もなく、抗がん剤の投与もありません。よかったです」

 このときの担当医の晴れやかな顔といったらない。それを思い出すと、いまでも私は1秒で泣ける。

 担当医もそうだけど、医療スタッフのかたがたが体をケアしようとしてくださった善意は、私がこれまで触れてきたどんな善意とも質が違っていた。純度100%。

「医師も看護師もふつうの仕事じゃない。人のためになろうという気持ちを持ち続けている徳の高い人間が就くんだね」

 その言葉を最近ことあるごとに、私は口にしている。

 担当医の笑顔にほほえみ返した次の瞬間、私はまた意識が遠のいた。

関連キーワード

関連記事

トピックス

『激レアさんを連れてきた。』に出演するオードリー・若林正恭と弘中綾香アナウンサー
「絶対にネタ切れしない」「地上波に流せない人もいる」『激レアさんを連れてきた。』演出・舟橋政宏が明かす「番組を面白くする“唯一の心構え”」【連載・てれびのスキマ「テレビの冒険者たち」】
NEWSポストセブン
大谷翔平(時事通信)と妊娠中の真美子さん(大谷のInstagramより)
《大谷翔平が帰宅直後にSNS投稿》真美子さんが「ゆったりニットの部屋着」に込めた“こだわり”と、義母のサポートを受ける“三世代子育て”の居心地
NEWSポストセブン
現場には規制線がはられ、物々しい雰囲気だった
《中野区・刃物切りつけ》「ウワーーーーー!!」「殺される、許して!」“ヒゲ面の上裸男”が女性に馬乗りで……近隣住民が目撃した“恐怖の一幕”
NEWSポストセブン
シンガポールの元人気俳優が性被害を与えたとして逮捕された(Instagram/画像はイメージです)
避妊具拒否、ビール持参で、体調不良の15歳少女を襲った…シンガポール元トップ俳優(35)に実刑判決、母親は「初めての相手は、本当に彼女を愛してくれる人であるべきだった」
NEWSポストセブン
「ミスタープロ野球」として広く国民に親しまれた長嶋茂雄さん(時事通信フォト)
《“ミスター”長嶋茂雄さん逝去》次女・三奈が小走りで…看病で見せていた“父娘の絆”「楽しそうにしている父を見るのが私はすごくうれしくて」
NEWSポストセブン
指名手配中の八田與一容疑者(提供:大分県警)
《ひき逃げ犯から殺人犯に》「生きてたら、こっちの主張もせんと」八田與一容疑者の祖父が明かしていた”事件当日の様子”「コロナ後遺症でうまく動けず…」
NEWSポストセブン
「グラディアトル法律事務所」の代表弁護士・若林翔氏
【改正風営法、施行へ】ホストクラブ、キャバクラなどナイトビジネス経営者に衝撃 新宿に拠点を持つ「歌舞伎町弁護士」が「風俗営業」のポイントを解説
NEWSポストセブン
中居正広氏の兄が複雑な胸の内を明かした
「本人にとって大事な時期だから…」中居正広氏の実兄が明かした“愛する弟との現在のやりとり”《フジテレビ問題で反撃》
NEWSポストセブン
長嶋茂雄・巨人軍終身名誉監督からのメッセージ(時事通信フォト)
《長嶋茂雄さんが89歳で逝去》20年に及んだ壮絶リハビリ生活、亡き妻との出会いの場で聖火ランナーを務め「最高の人生」に
NEWSポストセブン
中居正広氏の兄が複雑な胸の内を明かした
「兄として、あれが本当にあったことだとは思えない」中居正広氏の“捨て身の反撃”に実兄が抱く「想い」と、“雲隠れ状態”の中居氏を繋ぐ「家族の絆」
NEWSポストセブン
今年3月、日本支社を設立していたカニエ・ウェスト(時事通信フォト)
《カニエ・ウェストが日本支社を設立していた》妻の“ほぼ丸出し”スペイン観光に地元住人が恐怖…来日時に“ギリギリ”を攻める可能性
NEWSポストセブン
現在、闘病中の西川史子(写真は2009年)
《「ありがとう」を最後に途絶えたLINE》脳出血でリハビリ中の西川史子、クリニックの同僚が明かした当時の様子「以前のような感じでは…」前を向く静かな暮らし
NEWSポストセブン