1987年の騎手デビューから34年間にわたり国内外で活躍した名手・蛯名正義氏が、2022年3月に52歳の新人調教師として再スタートした。蛯名氏の週刊ポスト連載『エビショー厩舎』から、凱旋門賞馬が一度も勝っていないジャパンカップについてお届けする。
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東京競馬場の2022年最終レースです。ディープインパクトが勝った2006年以降は強い外国馬が来なくなりました。日本馬が強くなったこともありますが、やはり日本の速い馬場への適性が求められるようになったことが大きい。
いくら賞金がよくても勝たなくてはもらえないわけで、その自信と裏付けがないと来づらいかもしれませんね。3着でも1億円ですが、勝とうと思って勝てないこともあるのが競馬。3着でもいいと思っていたら、もっと着順が下がってしまうんじゃないでしょうか。
海外は競馬の賞金が安いから、牡も牝もいかに繁殖馬としての価値を上げるかが最優先ではないかと思います。いいところなく負けたりすると、それだけ産駒の価格にも影響します。
もう一つの理由は、選択するレースが少ないことかもしれません。あくまでも私感ですが、アメリカのブリーダーズカップや香港カップの日にはさまざまなジャンルのレースがあります。目指すレースがいくつかあれば、何頭か連れてきて一緒に調教できるけれど、1頭で来て1頭で調教するのは大変ですよね。
ところで、僕は1981年に行なわれた第1回のジャパンカップを東京競馬場で見ています。まだ札幌在住の中学1年生でしたが、ちょうど祖父の親戚にあたる信廣さん(元騎手・元調教師)の結婚式があって両親と一緒に東京へ行きました。競馬関係者の結婚式はだいたい厩舎全休日の月曜日、先乗りして見に行ったわけです。
競馬新聞を学校に持って行くような競馬オタクだったし、当時はもう騎手を目指して乗馬クラブに通っていましたが、東京競馬場に行ったのはこれが初めてでした。外国の馬なんて見たことがなかったけれど、親父は「イチかバチかだ」なんて言いながら1―8を買って当てていました(笑)。