レース後はただただ呆然。天皇賞(秋)の1、2、3着馬が、大きく離された5、6、7着。それほど有名でもないアメリカの牝馬がレコードで勝つし、4着までが外国の馬。しばらく日本馬は勝てないのではないかと思いました。第4回はカツラギエースの大逃げが嵌り、第5回は三冠馬シンボリルドルフが勝ちましたが、世界との差はまだまだあるような印象でした。
ただ、僕がこのレースに乗せてもらえるようになった1990年代半ば頃には、外国馬へのコンプレックスが少しずつなくなってきていました。勝つ馬は海外で実績を残した馬というより、日本の競馬が向いている馬だと思えるようになっていました。アメリカで2回も年度代表馬になったジョンヘンリーや、アーバンシー、モンジューといった凱旋門賞馬も来たけれど勝てなかった。逆に1995年に勝ったランドは、日本に短期免許で来ていたマイケル・ロバーツ騎手が「日本の馬場に合う」と進言して連れてきたと言われていますね。
今年は凱旋門賞馬アルピニスタの参戦が予定されていましたが、故障が判明したようで結局は回避、そのまま引退することになったようです。それでもなお参戦してくる馬は、日本向きという判断があるのかもしれません。
【プロフィール】
蛯名正義(えびな・まさよし)/1987年の騎手デビューから34年間でJRA重賞はGI26勝を含む129勝、通算2541勝。エルコンドルパサーとナカヤマフェスタでフランス凱旋門賞2着など海外でも活躍、2010年にはアパパネで牝馬三冠も達成した。2021年2月で騎手を引退、2022年3月に52歳の新人調教師として再スタートした。
※週刊ポスト2022年12月2日号