何種類もの薬をのむことで、その効果が薄れたり、思わぬ副作用が出たりする危険性もある。食品やサプリメントとの相性に気を配っていても、薬そのものが悪さをして体を壊すことがあるのだ。訪問診療で減薬に取り組む医師でたかせクリニック理事長の高瀬義昌さんは、薬の多剤併用のリスクを指摘する。
「そもそも副作用がない薬はありませんが、のむ種類が増えるほどにそのリスクは増し、相乗効果で体に害が出る可能性が高まる。特に高齢者は薬の種類が6種類以上になると、副作用が出やすくなります。20種類もの薬を服用していて、家族に暴力を振るうほどの問題行動を起こしていた高齢者が、薬を整理して6種類に減らしたとたん、もとの温和な性格に戻って、家族と楽しい時間を過ごせるほど回復したケースもあります」
特に危険なのは、脳内でリラックスを促す神経伝達物質の作用を強めて入眠を誘う『ベンゾジアゼピン系』と呼ばれる睡眠薬や抗不安薬だ。
「長年にわたって多量にベンゾジアゼピン系の抗不安薬を投与され、その結果として認知機能が低下したり、筋弛緩作用によって転倒・骨折、せん妄を引き起こしたりしているケースが多くみられます。現在では高齢者にベンゾジアゼピン系の薬を使用するのは控えるべきと考える医師がほとんどですが、いまだに処方されているケースもあるため、処方箋やおくすり手帳をチェックしてみてほしい」(高瀬さん)
高瀬さんが問題視するのは、薬の副作用を病気と勘違いし、服薬量が増えることだ。
「『スルピリド』という胃薬の副作用として生じた筋肉の弛緩や震えなどに対して抗パーキンソン病薬を処方された患者さんがいました。その副作用で認知症のような症状が出てしまい、結果、薬漬けになって歩けなくなったのです。そうした場合の多くは、一旦減量することで快方に向かいます」(高瀬さん)
何種類もの薬をのむこともリスクだが、その中でもとりわけ相性の悪い組み合わせが存在する。薬剤師の長澤育弘さんの解説。
「総合感冒薬は風邪の諸症状を抑えるために、さまざまな薬効のある成分が入っています。そのため、咳止め薬や解熱鎮痛剤と併用すれば、成分が重複して思わぬ副作用が出ます。
たとえば咳止めの薬と合わせると、両者ともに抗コリン作用といわれる副作用が生じ、その結果胃腸障害が起きることがあります。解熱鎮痛剤と一緒にのむと、胃に負担がかかり胃炎になることもあります。総合感冒薬で症状が治まらないからといって、プラスアルファで追加するのはやめましょう」(長澤さん)