ライフ

安堂ホセ氏「差別や抑圧の構造に共通するつらさや楽しいこともある感じを書きたかった」

安堂ホセ氏が新作について語る

安堂ホセ氏が新作について語る

 人は誰しも自分を通じて外界を見る。その時、その人をその人として認識する判断の基準は、実は結構、いい加減なものかもしれないと、安堂ホセ氏の第59回文藝賞受賞作『ジャクソンひとり』(河出書房新社)を読んで思った。

 だから本書のジャクソン達は、某大人気映画を茶化した〈俺たちも、入れ替わっちゃう~?〉作戦に、4人で打って出る。彼ら〈ブラックミックス〉の個々の違いがそうでない人にはわかりにくいことを逆手に取った、遊び半分、本気半分の、〈復讐〉である。端緒はSNSに流出したリベンジ紛いの凌辱動画。

〈ココアを混ぜたような肌、ぱっちりしすぎて悪魔じみた目、黒豹みたいな手足の彼は、ベッドに磔にされていた。そのビデオを見てすぐに、ジャクソンはそれが自分だと察した。その時のことは覚えていないし、似ている男なんて世界中に何人もいると思う。だけど、ここは日本で、この外見でこんなふうに扱われるのは、ジャクソンひとり〉──。

 著者は東京生まれの28歳。〈アフリカのどこかと日本のハーフで、昔モデルやってて、ゲイらしい〉という主人公を巡る噂の乱暴さは、自身も感じてきたという。

「着想そのものは、例えば『雑誌、見たよ』と昔の同級生から連絡がきたけど僕じゃないことが実際にあって、だとすれば自分と似たような立場の人が他にもいて、ならばこういう作戦も成立するよなあ……というふうに考えていきました。

 実は前回応募した作品もブラックミックスのゲイの子が主人公だったんですが、言葉が小説というより随筆に近いと選評にあって。そこで今回はジャクソンと〈ジェリン〉、〈エックス〉、〈イブキ〉というゲイでミックスの人間を4人出して、あえて虚構性の高い設定に挑戦した部分もあります。

 自分も海外で同じような目に遭ったと言う日本人もいるし、人の見え方は誰がどの角度から見るかで変わる以上、確かに誰にでも起き得る話かもしれません」

 スポーツブランド〈アスレティウス社〉のスタッフ専用ジムで整体師を務めるジャクソンが、バスケット選手の施術を終え、フードコートで昼食をとっていた時のこと。彼が椅子に脱ぎ捨てたロンティーに仕込まれていたQRコードをたまたま〈キャプテン〉の携帯が読み取ったが最後、その動画は社内中に拡散され、ジャクソンは好奇の目に晒されることになる。

関連記事

トピックス

フジテレビの第三者委員会からヒアリングの打診があった石橋貴明
《離婚後も“石橋姓”名乗る鈴木保奈美の沈黙》セクハラ騒動の石橋貴明と“スープも冷めない距離”で生活する元夫婦の関係「何とかなるさっていう人でいたい」
NEWSポストセブン
原監督も心配する中居正広(写真は2021年)
「落ち着くことはないでしょ」中居正広氏の実兄が現在の心境を吐露「全く連絡取っていない」「そっとしておくのも優しさ」
NEWSポストセブン
休養を発表した中居正広
【独自】「ありえないよ…」中居正広氏の実兄が激白した“性暴力認定”への思い「母親が電話しても連絡が返ってこない」
NEWSポストセブン
指定暴力団六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)
〈山口組分裂抗争終結〉「体調が悪かろうが這ってでも来い」直参組長への“異例の招集状” 司忍組長を悩ます「七代目体制」
NEWSポストセブン
筑波大学の入学式に出席された悠仁さま(時事通信フォト)
「うなぎパイ渡せた!」悠仁さまに筑波大の学生らが“地元銘菓を渡すブーム”…実際に手渡された食品はどうなる
NEWSポストセブン
新年度も順調に仕事を増やし続けている森香澄
《各方面から引っ張りだこ》森香澄、“あざとかわいい”だけじゃない「実はすごいアナウンス力」、「SNSの使い方はピカイチ」
NEWSポストセブン
4月7日、天皇皇后両陛下は硫黄島へと出発された(撮影/JMPA)
雅子さま、大阪・沖縄・広島・長崎・モンゴルへのご公務で多忙な日々が続く 重大な懸念事項は、硫黄島訪問の強行日程の影響
女性セブン
女優の広末涼子容疑者が傷害容疑で現行犯逮捕された(左/時事通信フォト)
広末涼子の父親「話すことはありません…」 ふるさと・高知の地元住民からも落胆の声「朝ドラ『あんぱん』に水を差された」
NEWSポストセブン
SNSで出回る“セルフレジに硬貨を大量投入”動画(写真/イメージマート)
《コンビニ・イオン・スシローなどで撮影》セルフレジに“硬貨を大量投入”動画がSNSで出回る 悪ふざけなら「偽計業務妨害罪に該当する可能性がある」と弁護士が指摘 
NEWSポストセブン
筑波大学の入学式に出席された悠仁さま(撮影/JMPA)
悠仁さま、入学式で隣にいた新入生は筑附の同級生 少なくとも2人のクラスメートが筑波大学に進学、信頼できるご学友とともに充実した大学生活へ
女性セブン
都内にある広末涼子容疑者の自宅に、静岡県警の家宅捜査が入った
《ガサ入れでミカン箱大の押収品》広末涼子の同乗マネが重傷で捜索令状は「危険運転致傷」容疑…「懲役12年以下」の重い罰則も 広末は事故前に“多くの処方薬を服用”と発信
NEWSポストセブン
人気のお花見スポット・代々木公園で花見客を困らせる出来事が…(左/時事通信フォト)
《代々木公園花見“トイレ男女比問題”》「男性だけずるい」「40分近くも待たされました…」と女性客から怒りの声 運営事務所は「男性は立小便をされてしまう等の課題」
NEWSポストセブン