新型コロナ感染は収束どころか「第8波」を迎えて猛威を振るっている。さらにこの冬は、コロナだけでなく3つの感染症が同時に流行する「トリプルデミック」の脅威が迫っているという。
12月末の深夜。自宅で高熱に苦しむ都内の70代男性がコロナ疑いの患者を受け入れる近隣病院に電話するも、感染者急増のせいか電話がつながらない。夜間診療を行なう病院にも助けを求めたが、「受け入れられない」と4つの病院に断わられた。救急車を呼ぼうとするが、高熱と脱水で意識が朦朧とし、やがて目の前が暗くなって──。
年末年始、感染状況によってこうした患者が溢れかえる危険が現実のものとして迫っている。
大分県では8月、発熱により感染を疑われた50代の女性が、コロナ病床に空きがないことなどを理由に11病院に受け入れを断わられ、翌日、熱中症で死亡する事態が発生した。
コロナ禍3年目となる今年はコロナによる死者が急増。2021年から倍増し、すでに3万人を超えた。
11月中旬からは1日の感染者数が8万~10万人前後に増え「第8波」に突入したが、今冬はさらに「インフルエンザ」の大流行が予想される。渡航医学の専門家・勝田吉彰医師(関西福祉大学教授)が指摘する。
「南半球のオーストラリアでは秋に当たる4月から感染が始まり、医療崩壊を招くほどインフルエンザが大流行したことから、6月に開かれた環境感染学会で日本における今冬の流行が懸念されていました」
その兆候は医療現場ですでに現われている。先日、発熱と喉の痛みなどでPCR検査を受けた30代女性が言う。
「検査の結果、コロナ陰性、インフルエンザ陽性と判明しました。5月にコロナに感染した時より喉の痛みや鼻詰まり、倦怠感などの症状がひどく、熱も39℃を超えて悪寒で震えました。時々発作のような咳も出て、本当につらかったです」
この女性、コロナワクチンは3回接種していたが、インフルの予防接種を受けていなかった。医療ガバナンス研究所理事長の上昌広医師が語る。
「コロナワクチンとの同時接種への抵抗感からか、インフルの予防接種を受けていない高齢者も多い。しかし、コロナに注目が集まりがちですが、インフルの毒性も強い。この3年は流行がなく多くの人の免疫が落ちているはず。一気に広がりかねません」