スポーツ

力道山未亡人は後に引導を渡される「自民党の大物」と中学2年で出会っていた【力道山未亡人~元日航CA・田中敬子の数奇な半生~#5】

後に敬子と結ばれる昭和の大スター・力道山

後に敬子と結ばれる昭和の大スター・力道山

“日本プロレスの父”力道山が大相撲からプロレスに転向し、日本プロレスを立ち上げてから2023年で70年が経つ。力道山はすぐに国民的スターとなったが、1963年の殺傷事件で、39年間の太く短い生涯を終えた。しかし、力道山を取り巻く物語はこれで終わりではない──。彼には当時、結婚して1年、まだ21歳の妻・敬子がいた。元日本航空CAだった敬子はいま81歳になった。「力道山未亡人」として過ごした60年に及ぶ数奇な半生を、ノンフィクション作家の細田昌志氏が掘り起こしていく。第4話は敬子が小学生の頃の記憶を資料から追跡する。【連載の第5回。第1回から読む】

 * * *

本当に「神奈川県代表」だったのか

 横浜市立間門小学校6年生の田中敬子は、横浜市を代表する健康優良児だった。

「朝日新聞・神奈川版」(1953年9月24日付)には、2日後の9月26日に横浜市立西中学校で行われる「昭和28年度・神奈川県優良児童審査会」に、男子26名、女子25名の1人として、敬子も出場する旨が書き記されている。ここで選ばれたら正真正銘「神奈川県代表の健康優良児」であり、これまで多くの年配の男女が自称してきた「健康優良児」も、彼女の場合は事実となるわけだ。

 1953年9月26日、土曜日。午前10時から審査会は行なわれている。身体検査と疾病検査に始まり、運動能力テスト、学力テスト、面接が1日かけて行なわれ、それらの結果から「神奈川県代表」が男女1名ずつ選ばれることになる。田中敬子にこの日のことを訊くと、意外な反応だった。

「場所がどこか、土曜日だったとか、全然憶えてません。西中? あらそうなの。何か特別なことをした記憶はなくて、先生に言われてそこに集まっただけ。身体検査やテストを受けたのは憶えています。走らされたりとか、ボールを投げたりとかも憶えてる。でも、まあ、それくらいかな」

 横浜市の代表として審査会に臨みながら、彼女にとっては、取り立てて特別な記憶にはなっておらず「遠足や運動会の思い出とそう代わりない」とまで言った。「結果はいつ言われましたか?」と尋ねると「その日? 翌日? それも憶えてないわ」と笑った。

 結果は審査会の最後に、西中学校の体育館に集められ発表となった。翌朝の「朝日新聞・神奈川版」(1953年9月27日付)は「健康優良児童県代表決る」という比較的大きな見出しを打ち、写真付きでその様子を伝える。記事は以下の通り。

《本年度県健康優良児審査会は県教委、県、朝日新聞横浜支局主催で二十六日午前十時から横浜西区西中学に各郡市の公立小学校代表五十一名(男子二十六名、女子二十五名)に私立小学校二名が参加して開き、身体、機能、疾病異状、運動能力、面接、学力テストなどを総合審査した結果、県健康優良児として男子五名、女子七名を決定。このうち県代表には男子で神野洋一君(生麦小)女子で田中敬子さん(間門小)がそれぞれ選ばれた》(同)

 つまり、田中敬子は本当に「神奈川県代表」だったのだ。筆者が新聞のコピーを彼女の前に差し出すと「うわあ」と子供のような声を上げて「こんな記事知らない。新聞に載ってたなんて、今知った。初めて見た。朝日? ウチは朝日新聞は取ってなかったもの」と不思議そうに記事のコピーをつまんだ。

関連記事

トピックス

62歳の誕生日を迎えられた皇后雅子さま(2025年12月3日、写真/宮内庁提供)
《愛子さまのラオスご訪問に「感謝いたします」》皇后雅子さま、62歳に ”お気に入りカラー”ライトブルーのセットアップで天皇陛下とリンクコーデ
NEWSポストセブン
今回の地震で道路の陥没に巻き込まれた軽自動車(青森県東北町。写真/共同通信社)
【青森県東方沖でM7.5の地震】運用開始以来初の“後発地震注意情報”発表「1週間以内にM7を超える地震の発生確率」が平常時0.1%から1%に 冬の大地震に備えるためにすべきこと 
女性セブン
竹内結子さんと中村獅童
《竹内結子さんとの愛息が20歳に…》再婚の中村獅童が家族揃ってテレビに出演、明かしていた揺れる胸中 “子どもたちにゆくゆくは説明したい”との思い
NEWSポストセブン
日本初の女性総理である高市早苗首相(AFP=時事)
《初出馬では“ミニスカ禁止”》高市早苗首相、「女を武器にしている」「体を売っても選挙に出たいか」批判を受けてもこだわった“自分流の華やかファッション”
NEWSポストセブン
「一般企業のスカウトマン」もトライアウトを受ける選手たちに熱視線
《ソニー生命、プルデンシャル生命も》プロ野球トライアウト会場に駆けつけた「一般企業のスカウトマン」 “戦力外選手”に声をかける理由
週刊ポスト
前橋市議会で退職が認められ、報道陣の取材に応じる小川晶市長(時事通信フォト)
《前橋・ラブホ通い詰め問題》「これは小川晶前市長の遺言」市幹部男性X氏が停職6か月で依願退職へ、市長選へ向け自民に危機感「いまも想像以上に小川さん支持が強い」
NEWSポストセブン
割れた窓ガラス
「『ドン!』といきなり大きく速い揺れ」「3.11より怖かった」青森震度6強でドンキは休業・ツリー散乱・バリバリに割れたガラス…取材班が見た「現地のリアル」【青森県東方沖地震】
NEWSポストセブン
3年前に離婚していた穴井夕子とプロゴルァーの横田真一選手(Instagram/時事通信フォト)
《ゴルフ・横田真一プロと2年前に離婚》穴井夕子が明かしていた「夫婦ゲンカ中の夫への不満」と“家庭内別居”
NEWSポストセブン
二刀流かDHか、先発かリリーフか?
【大谷翔平のWBCでの“起用法”どれが正解か?】安全策なら「日本ラウンド出場せず、決勝ラウンドのみDHで出場」、WBCが「オープン戦での調整登板の代わり」になる可能性も
週刊ポスト
世代交代へ(元横綱・大乃国)
《熾烈な相撲協会理事選》元横綱・大乃国の芝田山親方が勇退で八角理事長“一強体制”へ 2年先を見据えた次期理事長をめぐる争いも激化へ
週刊ポスト
青森県東方沖地震を受けての中国の反応は…(時事通信フォト)
《完全な失敗に終わるに違いない》最大震度6強・青森県東方沖地震、発生後の「在日中国大使館」公式Xでのポスト内容が波紋拡げる、注目される台湾総統の“対照的な対応”
NEWSポストセブン
安福久美子容疑者(69)の高場悟さんに対する”執着”が事件につながった(左:共同通信)
《名古屋主婦殺害》「あの時は振ってごめんねって会話ができるかなと…」安福久美子容疑者が美奈子さんを“土曜の昼”に襲撃したワケ…夫・悟さんが語っていた「離婚と養育費の話」
NEWSポストセブン