競馬場に行ってみれば、ひと昔前とは隔世の感がある。たとえば競馬好き女子、は大抵のファンの想像より多い。だが、競馬と長く付き合うには馬券とどう向き合うかも重要だ。競馬ライターの東田和美氏が考察した。
* * *
穴党にとって面白くないのは、◎がズラリと並んで1番人気馬の単勝オッズが2倍を切っているようなレース。本当の馬券師ならこんな「圧倒的人気馬」がいるレースは「見(ケン)」なのかもしれないが、レースを見るなら何かしら馬券を買っておきたいと思ってしまうのが私のようなミーハー・ギャンブラー。人気馬をはずしてワイドや複勝を買ってみたりするが、的中することは稀。
しかしジョッキーにしてみれば「圧倒的人気馬」に騎乗する時のプレッシャーはきついという。オッズは馬券購入者の総意なわけで、つまりは絶対に強い、普通に乗れば勝つと思われているということ。だから、どうしても正攻法の騎乗になりがちで、結果思い切った競馬をした馬にしてやられることがある。その硬さを馬が背中越しに「いつもと違う」と感じてしまうかもしれない。
そこで2022年のリーディング20位までのジョッキーについて、単勝1倍台の「圧倒的人気馬」に騎乗した時の成績を集計してみた。もちろん、勝ち負けはジョッキーの責任ばかりではないが、他馬とはかなり力差があると認められている馬でどれだけ結果が出せるかというのは知っておきたい。
単勝1倍台の1番人気馬に最も多く騎乗したのは、全国リーディングに輝いた川田将雅騎手。その数なんと103回! これだけグリグリの大本命に推されながらも、そのうち45回を勝ち切っている。勝率こそ5割を切るが、2着23回3着11回で連対率.660、3着内率は.766と人気に応えている。もっとも、馬券圏外に“飛んで”いるのも24回と最多。もちろんそれは「川田騎手だから圧倒的人気になった」ケースが多いからだろう。騎乗数103回も45勝もダントツの数字。それだけのプレッシャーに耐えるメンタルがあったからこそ、リーディングジョッキーになることができたのだろう。
次に「圧倒的人気馬」の騎乗が多いのはC・ルメール騎手。71回で34勝だからやはり5割を切っており馬券圏外は14回。リーディング2位の戸崎圭太騎手は49回中29勝で勝率は6割近いが、4着以下も9回。福永騎手は39回で21勝だが、4着以下も11回ある。武豊騎手の19回中4勝、4着以下が9回というのはリーディング20位以内の騎手ではもっともアブナイが、これらの騎手は川田騎手同様、騎乗することで人気になるため、単純に数字だけで判断することはできないだろう。ちなみにリーディング3位の横山武史騎手もやはり勝率が5割を切っている。なお、ジョッキーの力量がどれだけオッズに反映されているかを数値化するのは不可能なので、表面に出ている数値による考察であることをお断りしておく。