臨床心理士・経営心理コンサルタントの岡村美奈さんが、気になったニュースや著名人をピックアップ。心理士の視点から、今起きている出来事の背景や人々の心理状態を分析する。今回は、回顧録がベストセラーとなっているヘンリー王子の「レジリエンス」低下について。
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英王室を離脱したヘンリー王子の回顧録『Spare(スペア、原題)』が10日、世界各国で発売された。タイトルからして衝撃的で、ネガティブな印象が強く、人々の興味を掻き立てるためには十分効果的だ。
2番手や補充要員という意味の”スペア”は、貴族階級などでは継承者に何かあった場合にそれを補う予備の者を指すという。その言葉をタイトルにつけたというだけで、苦しさや悲しさ、辛さや怒り、フラストレーションといったマイナス感情ばかりが伝わり、今のヘンリー王子が心から英王室との和解を望んでいるとは思えないだろう。
販売元のペンギン・ランダムハウスが出したプレスリリースには「この本はヘンリー自身が、ようやく自分の物語を語る機会となる」と書かれていたといい、ヘンリー王子の最新のインタビューでは出版の理由を「私たちを守る唯一の方法は真実を書き残すことです」と語ったという。
本の中では、ウィリアム皇太子と口論した際に暴力を振るわれたことがあると語り、アフガニスタンの従軍中、イスラム主義組織タリバンの戦闘員を25人殺害し、その人々を「チェスの駒」と表現していると報じられた。英国ではすでにベストセラーとなっているようだが、それに反して英国での王子の支持率は過去最低の26%となった模様だ。
王子の境遇、立場、環境などを思い返せば、胸の内に複雑な感情があることは理解できる。だがこんなにも心が傷つきやすい人だったのだろうか。結婚前の王子は一般的にも無邪気でやんちゃなイメージが強かった。王子がもともと持っていた資質によるものも大きいだろう。そんな側面ばかりがメディアで取り上げられてきたためかもしれないが、ストレスにさらされてもうまく対処し、回復していくという力「レジリエンス」が高い印象があった。心が傷つき、落ち込んでも、そこから立ち直るしなやかさや精神的な回復力が高いように見えたのだ。