折に触れて自らを省みることは重要だ。コラムニストの石原壮一郎氏が考察した。
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「新型コロナウイルス」の出現で世の中が大きく変わってから、ふと気がつくと3年がたちました。「緊急事態宣言」やら「まん防」やらワクチンやら、さまざまな方法で戦いを続けていますが、感染者数や死者数はこのところ「急激」と言っていい増加傾向にあります。
1月12日に厚生労働省が発表した全国の死者数が489人で、一日の発表としては過去最多となりました。感染者数も1月6日に、24万6635人と過去最多を記録しています。12日はやや減りましたが、18万5472人と高い水準にあります。
ただ、多くの人は一時期ほどコロナを意識していません。仕事も日常生活も、たとえばコロナが騒がれ始めた2020年に比べると、医療や介護など一部の分野をのぞいて、かなりの部分でかつての生活様式に戻りました。適切で賢明な付き合い方を見つけたのか、単に「コロナを気にすることに飽きた」のか、そこは不明です。
いや、政府のコロナ対策を批判しようとか擁護しようとか、ワクチンやらマスクやら賛否が分かれる問題に首を突っ込もうとか、そういう意図はありません。勇ましい物言いで読者に気持ちよさを感じていただくのは、そう言うのが得意な人たちにお任せします。ここでは、この3年を振り返ることで何を学べるかを静かに考えてみましょう。
1回目の「緊急事態宣言」が出された2000年の春ごろ、世間は未知のウイルスに脅えおののいていました。飲食店や施設はシャッターを下ろし、子どもたちも学校に通えなくなります。にぎやかな繁華街がゴーストタウンのようになった光景を見て、誰もが不安と危機感を募らせました。高校野球も大相撲も中止になり、オリンピックも延期されました。
漠然とした恐怖心や不安感の成せる業と言っていいでしょう。当時、話題になったりよく見られたりしたのが、次のような事象です。
・感染者を極悪人のように非難する。感染者が出た家に落書きや投石をする
・感染したことで会社を解雇されたり、医療従事者の子どもが差別されたりする
・ネット上や実生活で、他人の言動をあげつらって「不謹慎狩り」に精を出す
・「マスク警察」や「他都道府県ナンバー狩り」の“取り締まり”が活発になる
・慎重に検討した上で学校行事や各種のイベントを開催すると、批判が殺到する
・お店を開けている飲食店が罵詈雑言の電話や貼り紙といった嫌がらせを受ける
・都会から田舎の実家に帰省することに対して、近所から非難の目が向けられる