ほかにも、「本人の不注意で感染したヤツは住所氏名を公表しろ」という主張をする人がたくさんいたりもしました。明らかに「異常な状況」です。しかし、あの頃は日本全体が一種の興奮状態にあり、こういうこともやむ無しという空気でした。
ちなみに、1回目の「緊急事態宣言」が7都道府県(のちに全国に拡大)に出された2000年4月7日の全国の感染者数は365人。今年1月12日は、その約67倍です。上のような事象は2020年のあいだは続いていました。2回目の「緊急事態宣言」が4都県(のちに11都府県に拡大)に出された2021年1月7日の全国の感染者数は7793人、同じく死者数は66人。今年1月12日は、それぞれ約24倍と約7倍です。
「感染を警戒する」という意味では、明らかにバランスがチグハグだと言えるでしょう。株がとか医療体制がとか理由を付けたとしても、単純に感染者数や死者数の比較から言ったら、何十倍も警戒したり興奮したりしてもおかしくありません。しかし実際には、2020年や2021年に比べて、世の中や私たちの気持ちは何十倍も落ち着いています。
それがいいのか悪いのかはわかりません。このバランスのチグハグさから、私たちは何を学ぶことができるのか。コロナが教えてくれた3つの教訓を見出してみました。
その1「私たちは客観的なデータに基づいてではなく、そのときの世間の空気や気分で行動したり腹を立てたりしている」
その2「私たちはちょっと時間が経つと、興奮状態で誰かにひどいことを言ったりしたりしたことを都合よく忘れてしまう」
その3「政府や偉い人が言うことも、それらを批判している人たちの意見も、あてにならないという点ではどっちもどっち」
なんて怖いことでしょうか。経験を少しでも糧にすることが、さんざんひどい目に遭わせてくれているコロナへの復讐に他なりません。何はさておき、自分が今大事だと思うことを優先しながら、コロナをちょうどよく意識しながら、自分とまわりがなるべく楽しく過ごせる方法を探しましょう。ひとりひとりにできるのは、結局はそういうことです。