よく知られる「正当防衛」は、〈急迫不正の侵害に対して、自己又は他人の権利を防衛するため、やむを得ずにした行為は、罰しない〉というものだ。「緊急避難」は〈自己又は他人の生命、身体、自由又は財産に対する現在の危難を避けるため、やむを得ずにした行為〉について、〈これによって生じた害が避けようとした害の程度を超えなかった場合に限り、罰しない〉と規定されている。
「撃たれる前まで暴走し、パトカーにもぶつけていたことで、警察官もしくは付近の通行人が巻き添えにされる可能性がある、切迫した状態だったとみることができます。
さらに警察官職務執行法では、現に凶悪犯罪をしようとしている犯人がいる場合には武器使用が認められています。正確には、〈死刑または無期もしくは長期3年以上の懲役もしくは禁固〉になるような罪を現に犯し、もしくは既に犯したと疑うに足りる充分な理由のある者が、〈警察官の職務の執行に対して抵抗し、若しくは逃亡しようとするとき〉などに、逮捕するために他に手段がない場合には武器が使用できます。
殺人未遂容疑を視野に捜査が進められているということは、この条文が該当する可能性があります」
かつて、警察官の発砲には厳しい目線が向けられた時代もあった。しかし、体感治安が悪化する中で、その空気も変わりつつある。今回の拳銃使用について、どんな判断がくだされるのか、注目が集まる。