テレビ局がリアルタイム視聴にこだわっていたときに、テレビよりも圧倒的に便利なYouTubeやNetflix、Amazonプライム・ビデオなどのネット配信が普及してしまったというのだ。
1991年にバブル崩壊。しかし本当の意味でテレビに冬が来たのは、2010年頃といわれる。2008年にスマホが登場し、娯楽が一気に多様化したことが大きい。
以降、豪華なスタジオセットも姿を消し、予算の削減はフリップ1枚、着ぐるみ1着にも及んだ。黄金期を支えた番組は次々に終了し、2014年には『笑っていいとも!』が31年半の歴史に幕を閉じた。
過剰なコンプラ重視は3.11から生まれた!?
昨今、番組制作の足かせといわれているキーワード「コンプライアンス(法令遵守)」。これは東日本大震災がきっかけとみる向きもある。
「3.11(2011年)をきっかけに、楽しむことが不謹慎というムードが社会全体に漂い、終わりのない自粛モードとなりました。モラルを守ろう、誰かを傷つけないようにしよう、という過剰な配慮がここで決定づけられましたよね。あのとき社会の意識が変わってしまったんだと思います」(境さん)
では今後、テレビは復活の狼煙を上げられるのだろうか。
「テレビ東京のように低予算を逆手に取って面白い企画を作ったり、ほかと被らない独自路線をいくのが、生き残るヒントかもしれません。あとは若い力を取り入れ、新しい風を吹かせていけば、テレビ復活の兆しになりえるのでは」(境さん)
そういう意味で戸部田さんが注目しているのが、各局の深夜番組だという。
「たとえばテレビ朝日の『バラバラ大作戦』の枠は、若い作り手が、冠番組はもちろんレギュラー番組すら持っていなかったようなタレントと組んで番組を作っています。フジテレビも『ここにタイトルを入力』の原田和実氏や、テレビ東京の『このテープもってないですか』『島崎和歌子の悩みにカンパイ』の大森時生氏、『盛ラジオ』の町田拓哉氏など、入社間もない20代の作り手が、テレビの枠組で遊ぶような番組を作っている。こうした若手の躍動に希望を感じますね」(戸部田さん)
いまや大規模な予算を組むNetflixやAmazonなどでは、こうした実績のない若手を起用することはあまりないというから、テレビの強みといえるわけだ。